【しょうねん、そしておおかみ】

第14話

【しょうねん、そしておおかみ】


 少年は狼になりたかった。だが村人は、彼を見ても怖がるどころか、可愛がるのだ。昔から少年は、それが不満だった。

 ある年、狼の群れが村を襲った。家畜の半分ほどが引き裂かれて食べられる被害が出た。けれど村人は、人間が誰も傷つかなかったことが幸いだ、と喜んでいた。

 少年はその日から、「狼が来たぞ」と森から村へと叫びながら走るようになった。

 最初は村人も少年の言葉を真に受け、子供たちを抱え家に隠れた。少年の親も例外ではなく、少年を抱きかかえようとした。すると少年は親の足元で、ぽかぽかと親の足を殴るのだ。終には噛み付く始末だ。

 村人はそれが少年の虚言だったと知っても、別段彼を咎めたりせずに、仕事へ戻っていった。

 少年の親は少年に、なぜ嘘をついたのかなぜ暴れるのか、を問いただした。その間も少年はただ、う~、と唸るだけである。

 次の年、今日も少年は森へ向かった。そこから村へと叫びながら走るためだ。だが森に着いた少年は、元々丸く可愛らしい目を、さらに丸くした。

 そこには狼の群れがいた。少年は震えて動けなかった。少年は叫ぼうとした。だがそのときには既に、のど元には狼が噛み付いており、それを目で捉えた瞬間、引き裂かれ、声は音にならなかった。

 少年の体に無数の狼たちが群がっていく。

 黒く変色していく自身の四肢を見ながら、少年は涙を流していた。

 ――これでやっとぼくも。

 

 この年、村はシンと静まりかえっていた。

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