【ペーパーなら水に流してよ】

第12話

【ペーパーなら水に流してよ】


「いるって」青色帽子の子が言いました。

「いないって」緑色帽子の子が言いました。

 二人の言い争いは結論のまとまらないまま口げんかに成り下がっていきます。

「いるって言ってんだろカス!!」

「証拠見せろやボケ!!!」

 二人の顔は真っ赤っかです。

「おやおや、どうしたんかいな?」

 そこへ裏山のお爺さんが通りかかりました。

「神様がいるかいないかで揉めてたの」二人は声を揃えて言います。

「ああそりゃいかんね。では私が判断してやろう」

 お爺さんはそう言うと青色帽子の子と緑色帽子の子の話を対等に聞いてあげました。

「なるほど、なるほど。では青色帽子の君に聞こうかね。神様は存在するという君の理屈は理解したよ。ではなぜ君は、神様が存在すると主張しなくてはならないのかね?」

「それはみんながよりよく幸せになるためだよ」

 お爺さんは、ふむふむと長い白髪の顎鬚を撫で、今度は緑色帽子の子に聞きます。

「神は存在しないという君の理屈は理解したよ。ではなぜ君は、神が存在しないと主張しなくてはならないのかね?」

「それは正しいことを正しいと認識しなくては世の中が良くならないからだよ」

 ふむふむ、とお爺さんはまた顎鬚を撫でます。

「では二人に聞くが、今君たちは喧嘩をしているね、それは幸せで正しいことかね?」

 二人は少し考えたあと、小さく首を振ります。

「なら、まずは神がいるかいないかではなく、今できること、仲直りからしてみなさい」

 二人は顔を見合わせます。

「その仲直りこそが、君たちの問いの本質に一番近い解答じゃ」

 そう言うとお爺さんは二人の帽子を一旦取り上げて、青色帽子の子には緑色帽子を、緑色帽子の子には青色帽子を被せ直し、満足げにその場を立ち去って行きました。



 二人はお爺さんの姿が見えなくなるのを確認し、今度は帽子の奪い合いを始めましたとさ。

 めでたし、めでたし。

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