【一番にゴール】

第8話

【一番にゴール】


 小学生のタモツは百メートル走でもゲームでも、球技でも、算数の計算でも、とにかくゴールのあるものには何でも挑戦する。他人と競争し、誰よりもはやく、一番にゴールすることが生きがいなのである。そして今までずっと一番だった。

「タモっちゃんはすげぇなぁ。なんでもいちばんで」

「そうだよなぁ。もう、うちらの歳でなら世界でもいちばん強いんじゃない?」

 友人たちは口々に言う。

「強いってなんじゃそりゃ? はやいって言えよ」タモツは上機嫌だ。

「うん、タモツくんはめちゃくちゃはやすぎるよ」そうだそうだ、と皆はタモツを持てはやす。

「タモっちゃんよりはやくゴールできるの、もう、なくね? おれたち」タモツの一番のライバルが言った。

 う~ん、と誇らしげな顔で考えていたタモツは、思い付いてしまった、彼らが自分よりもはやく到達するかもしれないゴールがあったことを。

「負けらんねぇ! ちょっくら俺、行ってくるわ」

 焦ったタモツは友人たちにそう言い残し、自宅でもある、高層マンションまで走った。

 タモツは階段で一気に屋上まで駆けあがる。空を見上げ、息の切れた呼吸を整えた。

「良かった、おれがいちばんだ……」


「はやすぎる」

 後日、大人たちも口を揃えて呟いていた。

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