188話 交換条件
「絶対に渡さないから。これ私の宝物なんだからね。いくら祐くんでもこれは聞けないな」
「それでもこの写真は恥ずかしいから! お願いします。前に撮った写真ならどれでもいいから、これだけはやめてください。もし誰かに見られたら俺もう不登校になるかもだから」
誰かに知れ渡ったら絶対もう学校に行けない。いや、行かない。みんながそこのとを俺に話さなくても行かない。
「それは困っちゃうけど私は絶対に渡さないもん!」
それでも頑なに俺に写真を渡してくれない葵。どうしたら渡してくれるんだ。
「なら葵。その写真を渡してくれたら代わりにいつもの一回キスとは別にいろいろしてあげるぞ。あんまりしたことないけど、膝枕でもいいし、寒くなったら2人で1つのマフラーとかもいいな」
それを聞いた瞬間、葵はすごく嬉しそうにでもすぐに首をブンブン振る。かなり迷っているらしい。
それからうーんと唸ったり、首を振ったりすること5分。意を決したようにゆっくりと写真を俺の方に差し出した。
「祐くんがそこまでしてくれるならこの写真はあげる…でも! その代わりもっとイチャイチャしてもらうんだからね!」
そういうと葵は抱き付いてきた。ただ、いつも以上にぎゅーってしてきてすりすりしてくる。甘えてきてる感じがすごい。
「ん〜やっぱり写真で思い出して幸せな気分になるのもいいけどこうして温かみを感じる方が何倍もいい」
「葵…」
確かにこうして感じられる葵の温かさはすごく心地良い。俺も葵と撮った写真とかたまに見返すけどやっぱりこうしてしっかり葵を感じられる方が好きだ。
「それじゃあ祐くんをこうして抱き締めるのは堪能したから、膝枕でいろいろしてもらおうかな」
「はいはい」
葵がいつも座るクッションに俺が座って、正座だと高いので膝を崩してちょうどいい高さにする。
準備ができたところで葵の頭が俺の太ももに当たる。お風呂にはまだ入っていないはずなのにさらさらした髪。
「祐くんの脚はやっぱり硬いや。筋肉質」
「いやか?」
「ううん。全然いやじゃない。男らしいね、祐くん。かっちかちだ。」
俺の太ももにすりすりしてる葵。ちょっとくすぐったい。
「祐くん、このまま頭撫でて」
「本当しょうがないなぁ葵は。甘えんぼさんだ」
「そうなの。私ってすごい甘えん坊なんだよ? 知らなかった?」
「知ってるよ。葵が甘えん坊なことも、負けず嫌いなことも、すごく頼りになることも。一応、葵のことは他の誰よりも知ってるって自負してるからね」
そうは言ったけど、葵と離れ離れだった中学生の時代とかは俺には一切分からない。葵の中学生時代を知ってる人が羨ましい。
「祐くんが1番私を知ってるよ。それこそお母さんたちよりもね」
「それはどうかな? 流石に勝てないよ」
「私が言ったらそうなの。ほらほら、もっと頭撫でて?」
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