141話 たこ焼きパーティー(2)

 そっと葵が俺の右手を掴む。


「いい祐くん。これは落ち着いてやるんだよ。それでこうやって外側から…で、手首を回して中に包み込む感じで…そうそう。そんな感じ」


 葵の手によって誘導されたおかげで上手く回すことが出来た。まだ俺の手には葵の手の感触が残ってる。って何考えてんだ。


 次は補助なしで。さっき言われたみたいにすれば…


「おぉ、祐くん上手!」


「お兄ちゃん…成長したな…」


「鈴、それなんのキャラ?」


 よく分からないキャラを演じる鈴は放っておいて葵にお礼を言う。


「ありがとう葵。なんかやり方分かった気がするよ。もう大丈夫だから葵も戻ってたこ焼き作ろう」


 それに対して葵は歯切れ悪く「え? あっ…そうだね」と答えるもののなかなか離れようとしない。


「もうっ。祐くん覚えるの早すぎるよ。これじゃこんな滅多にないシチュエーションが終わっちゃう…」


「葵、何か言った?」


 小声過ぎてよく聞こえなかったけど、こうやって離れないってことはこのまま続けたいってこと?


「あ、やっぱりまだやり方あんまり分からなかったかも。もし良かったらもうちょっとさっきみたいに教えて欲しいな」


 そう言って振り返るとそこにはパァァっと笑顔になった葵がいた。


「もうしょうがないなぁ祐くんは。仕方ないから私が何回も教えてあげる。私のことは先生って呼んでね」


 さっきよりもっとぎゅーっと背中に抱き付いてくる。こんなこと先生はしないだろ! それにこれじゃさっき葵が言ってた「落ち着いて」なんて出来るわけねぇ!


「あ、あの葵…葵?」


 呼んでも返事してくれない。


「今は葵じゃないもん」


 ちょっと拗ねた感じで言う葵が可愛い。でも1つ聞きたい。あれ本気だったの?


「葵…先生…?」


 先生をつけて呼んでみる。本当の先生を下の名前で呼ぶのは無理。


「えへへ、何かな祐くん!」


「近いんですけど。ちょっと離れてくれると嬉しいです」


「それはダメです。先生にそんなこと言っちゃいけません」


 そんなこと言う葵だが残念なが先生感はゼロ。たぶん葵は先生には向いてないと思う。


「ちょっとお兄ちゃんたち! そんなイチャついてると焦げちゃうよ!」


 危ない焦がしてしまうところだった。イチャついてるって妹に言われたのは恥ずかしかったけど。


「あぁこれは葵先生のせいですね。ほんと焦げたらどうするんですか」


「私のせいじゃないもん! そんなこと言う悪い祐くんには後でお仕置きです」


 何それ! 今の時代は体罰とかアウトですよ! 俺の考えを読んだのか葵先生? はふふふと笑って答えた。


「祐くんのお部屋行ったらキスしてもらいます」


 それお仕置きじゃないやつ!




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