129話 勝負しよう

「はい、そこまで」


「はぁ、やっと終わった。祐輔どうだ? 今回は俺も春香に勉強教わったからお前に勝てる気がしてるぜ」


「残念だが俺も葵としっかり夏休みから頑張ってたからな。終わらせるのが遅かった進よりは点はいいよ」


 こいつ夏休み最終日くらいまでなんか宿題残ってたとか言ってたし、絶対ロクな点取れない気がする。雨宮さんどれくらい進に勉強教えたんだろ。


「ふっ。言ってくれるな祐輔。そこまで言うなら勝負だ。負けた方がジュース1本。どうだ?」


「その勝負乗った。負けても文句言うなよ?」


「その言葉そのまま返すぜ」


 カッコいいこと言ってるけど賭けるのがジュース1本とか寂しい。でもこれ以上の上乗せはしないけど。


「祐くんお疲れさま! 夏休みしっかり頑張った甲斐があったよ。これからも頑張ろうね!」


「お疲れ葵。そうだな。頑張って大学いこうな」


「おい! なにいい感じになってんだよ! 俺との勝負忘れるなよ!」


「なんの勝負かわかんないけど祐くんが風間くんに負けるわけないもーん」


 葵。嬉しいけどハードル上げないで。進に負ける気はしてないけど。


「それじゃ祐くん部活行こっ。今日もいろいろアドバイスよろしくね」


 そう言うとカバンを取りに自分の机へ。部活行く準備しよう。




 ◆◆◆




 葵は部活のユニフォームに、俺は制服を脱いでTシャツに。部活が始まるまでの木陰でお喋り中。


「祐くん大学ってどこかとか考えてる?」


「うーん。確かにあんまり深くは考えてなかったな。今、葵と入れて本当に楽しくてさ」


 葵は「んもぅ祐くんたら」とか言ってるけど、確かにそろそろ大学も考えてないといけない。


「葵は何学部とか将来の夢とかあるの?」


「もちろん第一希望は祐くんのお嫁さんだよ」


 純粋な目で俺を見てくる葵。そりゃそれは嬉しいけど大学にはお互い行こうよ。


「あ、あのさ。なら俺は葵のお婿さんという夢で良いのかな」


 言って思った。なんて恥ずかしいことを言ってしまったんだ。言った後で後悔がハンパなく襲ってくる。


 女の子がお嫁さんと言うとはすごい可愛い感じもするけど男がお婿さんとか言うと痛いヤツとしか思えない。恥ずかしい。葵、俺を見ないでくれ。


 そっと葵の方を見てみると葵も目線を下にして地面を見ている。あぁ、これは引かれた。と、思ったのだが。


「祐くんの夢、すっごく素敵だと思う! えへへ。祐くん私のこと好き過ぎでしょ。お婿さんなんてっ」


 予想外の展開になっていた。なんと葵は引くところがめっちゃ喜んでた。


「あ、うん。そういうこと。それより葵。部活始まるからもう行ったほうが良いんじゃない?」


「あ、本当だ! それじゃ祐くん行ってくるね! 私頑張るからしっかり見ててよ!」


 俺は元気にグランドに走っていく葵を見送った。グランドに立つみんながとても羨ましく見えた。

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