115話 病院で

 ピッピッピッ


(ん? なんだこの音は。それに身体がだるい)


 よく分からないけど今俺は寝ているということだけは分かった。


 そして左手には暖かい温もりが。


「んっ」


 うっすらと目を開け、徐々に慣れたら目を完全に開いて左手の方を見る。


 見てみるとそそこにはイスに座った葵が居て俺の手を握っていた。


「え? あおい?」


 なぜか口も上手く回らない。本当に何が起こったのか。


「あ! 祐くん! 良かったよぉ。ちゃんと目覚ましてくれたよぉ」


 そのまま泣き出してしまった。困惑しながら起き上がろうとしたらまだ涙を流している葵に止められてしまった。


「ぐすっ。ぐすっ。ごめんね、急に泣いちゃって。でも祐くんがちゃんと起きてくれて安心しちゃって。今、祐くん熱中症で倒れて運ばれたの。覚えてる? それでここは病院のベッドだよ」


 そう言われて辺りを見渡すと右腕には点滴がしてあり頭の近くからは、さっきからピッピいってる機械が。


 なるほど。全然覚えて無いけど病院に居るってのは理解した。


 ただなんで熱中症に? そこらへんの記憶が全然無い。


「祐くん。今日、何があったか分かる?」


「今日…」


 ゆっくり今日のことを思い出してみる。確か今日は8月最後の土曜だった気がする。進が全然宿題終わらんとか言ってたような…


「今日って…全国大会予選の日…?」


 それに対して葵は黙ったまま首を縦に振った。


「ならなんで俺はここに?」


 また分からなくなってしまった。今日が全国大会予選の日。それで俺は熱中症になったらしい。


 いつなった? 試合中? 試合前? 後? ちゃんと俺投げたよな? 勝ったよな? 


 グルグル頭の中でいろんなことが回ってる。軽いパニック。


「祐くん、今日いつも以上に汗かいてたし、すごいふらふらしてたからもしかしたらって思ったんだけど…ごめんなさい。あのとき本気で祐くんを止まるべきだった」


 だんだん思い出してきた。あのとき俺は無理してマウンドに上がってそれで…


「いや、俺の方こそごめん。あのとき飲み物なくて。試合終われば自販機で買えると思って我慢したらこんなことに。ちゃんと言っておくべきだった…心配もすごいかけたよね。本当にごめん」


 はぁ、俺って何やってるんだろ。無理してそんなことしても葵が喜んでくれるわけなんてないのに。


「それで試合の方は? たぶん明日の試合は投げれると思うんだけど」


「試合なら棄権したよ」


「え?」


 俺は葵の言ってる意味がわからなかった。



 ===


 実際熱中症で倒れてた場合、次の日また試合に出るなんてことはできません。今は冬ですが熱中症は甘く見ないようにお願いします。

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