114話 やばい

「今日、絶対勝って明日の決勝トーナメントまで絶対行くぞ!」


「「おおーー!!」」


 今日は8月最後の土日。そう待ちに待った全国大会予選の日です。このクソ暑いのによくやるもんだ。


 1回戦を前に円陣して声を出す。今日のトーナメントで2戦勝てば明日の決勝リーグに進める。まずは今日の2試合勝つ。


 そして絶対みんなとの約束を果たす。


「にしても暑いなほんと。汗が止まらん」


 もうユニフォームには汗が滲んでしまっている。これ今日持ってきた水分だけでもつかな。


「祐くんはいタオル。ちょっと汗拭いたら?」


「あ、ありがとう葵」


「それにしても今日は祐くん汗すごいかいてるね。しっかり水分とってね」


 葵に注意をされつつ1回戦を迎えた。



 ◆◆◆



「あー疲れた。このクソ暑いのによく祐輔も集中して投げれるよな」


 とりあえず1回戦。成南高校は4対1で勝った。汗のかきすぎで何回アンダーシャツを変えたことか。でもなんとかまず1勝できてよかった。


「それを言ったら進だってこの暑いのによくあんなに守備守っていられるよな」


「いやいやそりゃそういうもんよ」


「そゆこと。俺もそうだって暑いとか関係なし」


「なるほどな。でも俺水分もう半分くらい飲んでしまったわ。春香が買って来てくれるから助かった」


 俺も結構飲んでしまった。これたぶん最後までもたないやつだ。でもどうしようもないしここからは我慢。


「進。次の試合3試合目だからもう準備な」


 進が「早すぎぃ」とか言ってたけどしょうがない。これ勝てば明日行けるんだから頑張らないと。ただ午後の猛暑の中試合はきつい。



 ◆◆◆



 そんな俺に異変が起こったのは2回戦が始まってしばらくしてから。2回表。俺たちの守備。なんか頭が痛くてちょっとクラクラする。葵のミットがよく見えない。


(あれ? これ熱中症のじゃないか?)


 今、ほぼ水分をとってない状態でまだ汗はガンガン出てる。


(いやいや、ただ疲れただけだろ。熱中症とか俺がなるわけないし、こんなところで負けてられない)



 なんとかこの回も抑えベンチに帰っていく。


「祐くん大丈夫? なんか辛そうに見えるしボールも走ってないよ。本当に水分とってる?」


 心配させたくなかった俺は疲れただけど言ってベンチに戻った。ただ試合が終われば自販機で飲みもの買えばいいのであとちょっとの我慢だ。


 ただ俺は油断してた。熱中症はそんな軽いもんじゃなかった。


 3回、4回と回を重ねるうちにどんどん体調が悪くなっていく。この時本気で思った。俺熱中症だと。


 葵にお願いして少し水分を分けてもらったけど時すでに遅し。


 5回のマウンド。5対3でのリードでの場面。


「祐くん、足もふらふらしてるしちょっとおかしいよ。目もうつろ空だし。一度医務室行った方が」


「いや、大丈夫。さっき飲み物もらったし全国大会行くんだろ? 試合終わったらすぐ安静にするから」


 葵はしぶしぶと言った感じで戻っていった。あと少し。ただ俺も限界かもしれない。強がったけどもう無理だ。吐き気もするしまともに立ってもいられない。


 なんとかセットポジションに入って…


 俺の意識が保ったのはここまでだった…

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