111話 新幹線の車内で

「2日間ありがとうございました」


 もう旅行も最終日。お世話になったホテルに挨拶してチェックアウトした。


 本当にいいホテルだったので大人になったらまた泊まりたいなって思う。


「それで今日はどこ行くんだ?」


 服だのお土産だのは昨日ホテルの宅配サービスにお願いして送ってもらった。なので今日はほぼ荷物はない。服もコインランドリーで洗って乾かしてないいるので安心。


 そして、今日行くところもやはり聞かされていない。教えられているのは帰りの新幹線が午後5時くらい出発だっていうことくらい。本当にシークレット旅行だ。


「今日行くところは浅草だったりそんなところだ。じゃ祐輔よろしくな」


 こうして旅行最終日が始まった。




 ◆◆◆




 そしてもう今は帰りの新幹線の中。


 それにしても本当に楽しかった。浅草寺では葵が声に出してお願いするし(俺が恥ずかしいお願い)


 渋谷では葵と鈴が服をいろいろ試着してファッションショーになって。2人ともどの服も似合っていてとても良かった。俺も2人にマネキンみたいにいろいろ着させられたけど。


 いろいろあった3日目も本当に最高の思い出になった。


「もう後は帰るだけだね、祐くん」


「そうだな。あっという間だったよ」


 3つある座席の真ん中に座った俺。右には葵。左には鈴がいる。鈴の方は疲れ切ったのかスヤスヤと寝ていた。左の葵は…元気なようだ。


「大人になって私たちが自立したらまた行こうね」


「それは新婚旅行ってこと?」


 俺の言葉を聞いた瞬間ボフッと顔を真っ赤にして顔をプイッと背けた。


「そ、そういう意味じゃないんだけど…でもそれでもいいっていうか…私ははやく結婚したいっていうか、婚約はせめてはやくしたいっていうか…」


 何かぶつぶつ言ってる。


「葵?」


「ひえっ? ゆゆ祐くん! 婚約はどうするの!? 結婚式とは違うから…うーん帰ったら調べてみるから!」


 いつの間に婚約がどうこうとかになった? え? 俺そんな申し込みしたの? したら絶対に記憶にあるはずなんだけど。


「あの、葵? 急にどうしたんだ? 婚約とかなんとか。俺そんなこと言ってないんだけど…いや、嫌なんじゃないんだけど!」


「あ、ごめん祐くん! 私慌てちゃって! その今のは聞かなかったことに」


 あれだけ聞かされて今のナシって言われても。


「分かった。今のは聞かなかったことにする。でもいつか必ずちゃんというから。だから、聞かなかったことにはするけど実現させるから」


「う、うん! 本当嬉しい! ただ祐くんがのろのろしてたら私から言っちゃうからね」


「それはそれで良いけどやっぱり俺が言いたいから頑張るよ」


「うん。私も頑張る。祐くん、大好き!」




 こうして俺たちのドタバタな旅行は終わった。8月の最後の日には全国大会予選がある。次こそはいける。今の俺はそう思っていた…

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