76話 ジュースを貰うには

「はい」


 俺はそう言って両手を広げる。


「祐くーん!」


 俺が両手を広げた瞬間、葵がぽすっと俺の胸の中に飛び込んで来た。そして葵をギュッと抱きしめる。葵も俺の背中に腕を回してギュッとしてくれる。


 人前っていうのを今全然気にならない。そんなことを気にするよりもこうやって葵の温もりをもっと感じていたかった。


 葵は俺の胸に頭をグリグリしてとても嬉しそう。「祐くん大好き」って俺以外には聞こえないくらいの声量で言ってくれた。体温が急激に上がった感じがする。


「俺も大好きだ、葵」


「うー」


 葵はさっきよりも強くグリグリ頭を押しつけてくる。よく見ると耳が真っ赤で照れてる感じがした。


 たぶん抱き合って30秒。俺にはもっとあっという間に感じた。そこで店員さんにオッケーをもらった。


「ありがとうございました。いや〜お2人素晴らしいカップルですね!本当にお互いが大好きって感じが伝わって来ますよ。それではこれがジュースです」


 何がどうか分からないけど合格したらしい。ジュースを貰って俺は店員さんに券を2人分渡して俺たちの席に戻った。


 席に戻る途中葵はとても上機嫌だった。俺の横でスキップをしていた。


「んふふ。ちゃんと調べておいて良かった。こんなお店があるなんてスイーツパラダイス最高」


「あんなのがあるなら先に言っておいて欲しかった。まじでびっくりしたんだぞ」


「あーゆーのはサプライズだよ!他の人に私たちのことをどう思われても良いけどいいカップルだって言われたら嬉しいし。本当のことを言うともっとくっついていたかったな...」


 あれだけでは足りないと言う葵。俺も本心を言うとあれだけじゃ足りないとか思ったけど。


 席についたのでついにケーキを食べることができる。のだが目の前にはインパクトのあるグラス。

 ストローの口は俺と葵の正面に2つ空いている。


 まさかこれするの?


「それじゃ俺から一口飲むよ?」


「え?」


 葵から嘘でしょ?みたいな感じを受けた。いや、冗談だよ。


「それじゃ飲もっか」


 お互いにストローに口を近づける。それと同時に必然的に近づく顔と顔。近い。キスするわけでもなんでもない。ただジュースを飲むだけなのにめっちゃドキドキしてくる。


 葵とバッチリ目が合う。いつも合う目とは違って今は何故かよく葵のきれいな目を見ることができた。


 それから口をつけてジュースを吸う。それからしばらくして俺たちはストローから口を離した。


「これすごい祐くん。やみつきになりそう!」


「俺めっちゃ恥ずかしかった。葵、目合わせた後ずっと見るから」


「そりゃずっと見てたいよ。こんな至近距離で祐くんの顔があったら見ちゃうよ」


 すごい。これがカップルジュースの力なのかと実感してしまった。

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