第91話 閑話:拠点で女子話

 閑話です、話は襲撃前に戻ります。





 『タイガーケイブ』の男達が、刺客を拠点におびき寄せる為に早朝から馬車で出かけました。


 ミレーヌさん、リーゼさん、アダモちゃんと私は残って襲撃に備えます。

 たぶん襲ってくるのは深夜になると思いますので、私達は交代でお昼寝をしなければなりません。



 リーゼさんがアダモちゃんに質問しました。


「アダモちゃんは、まだ生まれてから1年ぐらいなのよね?」


『はい、そうですぅ』



「1年なのに言葉が上手だし、沢山変わった言葉を喋れるし、何処でそんな言葉を覚えたの?」


『インベントリの中にいっぱい本があるのです。コピー本とか薄い本という物ですぅ』


「聞いたことない本ね?」



「アダモちゃん、私もちょっと読んで見ようかな?」


『御嬢様には見せられませ~ん。成人指定とか15禁とか書いてあるのですぅ』


「まぁ、15歳以上の成人じゃないと閲覧できないって事ね?」


『はい、そうですぅ』



「いったい、どういう内容なの?」


『御嬢様には教えられませんが、本の筆者は全てサチコという方ですぅ』


 私はズキンズキンと頭が痛く成ってきました。



「私達は成人してるから問題ないわよね。マリエルちゃんに関する事が書いてないか検証してあげましょう」


「そうですね。アダモちゃん、ミレーヌさんとリーゼさんになら見せてもいいわよね?」


『は~い』



 私はインベントリから数冊の本を出して、ミレーヌとリーゼに渡しました。


「まぁ……」


「あらら……」


「むぅぅぅん……」


「ふんすっ……」


「はぁ、はぁ、はぁ……」



「う~ん、ガツンとくる大人の芸術本だわ!」


「残念ながら、マリエルちゃんに関することは無いみたいね」



「光成と吉次が秀逸だわ」


「わたしはヘンリーとリチャードかしら王子同士の禁断の愛がゾクゾクするわ」



「これはもう全巻読破するしかないわね」


「筆者にファンレターを書こうかしら」


「続きが読みたいわ。マリエルちゃん、もう少し本を出してくれますか?」


「……はい」



 私は再びインベントリから数冊の本を出して、ミレーヌとリーゼに渡しました。


「まぁ……」


「あらら……」


「むぅぅぅん……」


「ふんすっ……」


「はぁ、はぁ、はぁ……」




「う~ん、凄い。斬新な展開が次から次へと繰り広げられます」


「この様な奥深い世界があったのですね!」


「私達もマリエルちゃんの国に行きましょう」


「そうね、新しい世界の扉を開くのよ」



「あのぅ、私の国を一緒に探してくれるのですね?」


「ふんすっ、これはもう行くしかないでしょう」


「是非とも、他の作品を読ませて貰わなくてはならないわ。新刊というものを」




 更にまだ読んでない本に、ミレーヌとリーゼの手が伸びます。




「あのぅ、襲撃に備えた方がいいですよね? 食事やお茶も忘れて読み続けていますけどぅ……」


「そ、そうね……じゃあ食事の準備をしましょうね」


「はい」


 と、言ったにも関わらず、2人とも本を読み続けています。



「はぁ、スグに本の中に引き込まれてしまいますね。私が1人で準備するしかなさそうです」


 2人とも私の声が聞こえていません、仕方なく私は夕食の準備を1人で始めました。

 まだ昼食も食べていなかったのです。



「サチコって、何者なんでしょうね? はぁ」

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