第72話 ゴーレムのアダモちゃん
「マリエル御嬢様、馬車を護衛するゴーレムは金属製にして下さいませんか?」
「はい。まだ土以外でゴーレムを作った事はありませんが、やってみましょうね」
「土製のゴーレムは魔力が尽きると崩れて土に戻ってしまいますが、金属製なら動かなくなるだけで崩れる事はありません」
「そうなんですね」
マリエルは暖かい眼差しでサッチャンに微笑みました。
「土製のゴーレムは、物理攻撃でも崩れますし、水属性魔法が弱点になります」
「はい」
「金属製のゴーレムなら物理耐性が元々ありますし、勿論水属性魔法にも、その他の魔法にもある程度の耐性が期待できますから」
「はい。サッチャンはロボットアニメも好きそうですね」
私はサッチャンの目が星のようにキラキラしてるのに気が付きました。
「ウォッフォン、マリエル御嬢様は金属材料の在庫をお持ちですか?」
「はい、持っています。私は【採取】【鑑定】【識別】スキルがレベル5なのですよ。歩いているだけで見える範囲の薬草や鉱物を認知出来ますし、手の平を向けて【採取】と唱えるだけで、それらをマジックバッグに収納する事が出来るのです」
「まぁ、何と言うチートでしょう。女神様あああっ! 此処にチートな転生者がいまあああすっ!」
『サチコさん。マリエルは私の
「はは~っ」
突然会話に入って来た女神様の声に、サチコは床に平伏しました。
「申し訳ありません。私の不敬をどうかお許しくださいませ。冗談の
『そうですか、私に訴えたのだと思いました。空気が読めなくて御免なさいね。でも『私の名を無闇に呼んではならない』と神の御言葉にあります、冗談にしても言葉には十分気を付けましょうね。神は全てを聞き御存知なのですから』
「はい。無闇に天に向かって呼び掛けないように致します」
『そうそう、サチコさんの能力【脳内図書館】も今考えてみたら結構なチートでしたね。今更取り上げる
「はい、畏まりました」
ケンちゃんがサッチャンに耳打ちして小さな声で囁きます。
「サチコ、エイル様の美貌を褒めるんだよ。おべっかに弱いんだから」
「若くて美しい慈悲深い女神様、御指導ありがとうございます。全て仰せの通りにいたします。わざわざお言葉を下さりありがとうございました」
『ケンちゃん、聞こえてましたよ。まぁ、特に問題も無いのでいいでしょう。楽しく暮してくださいね。ごきげんよう』
「「「ごきげんよう、ふぅぅぅっ!」」」
「ところで御嬢様、金属は何を持っているのですか?」
「え~とぅ、ゴーレムを作る為の金属だとねぇ。ミスリル、オリハルコン、アダマンタイト、
「えっ、それを全部持っているのですか? ゴーレムが作れるほどの量を持ってらっしゃるのですか?」
「はい、持ってますよ」
「みなさあああんっ、此処にっ、ここに金属チートな御令嬢が居まあああすっ!」
「はいはい、もうその下りは良いですから。1番硬そうなのは、私の【鑑定】だとアダマンタイトですね。それでゴーレムを作って良いですか?」
「まぁ、盗賊対策ですから、それでお願い致します」
「はい」
★ 〇 ▼ 〇 ★
「出来ました、アダマンタイトゴーレムの『アダモちゃん』です!」
「早っ! それにネーミング! 自動車メーカー開発の2足歩行ロボットですかっ!」
マリエルの横に、宇宙海賊カブラに出てくる女性アンドロイドの様なセクシーゴーレムが立っています。
「以前、サンクトガレン城をオークの群れが襲いましたが、その時倒したオークキングの魔石をアダモちゃんの魔核として使ってますのよ」
「オークキングの魔石なら十分でしょう。輸送馬車の護衛ができる様にプログラミングした御嬢様の命令を与えてください」
「は~い。 アダモちゃん、ケーキを運ぶ馬車を守ってね」
キョロンッ!
マリエルは首を可愛く傾けてニッコリと微笑みました。
『オッフ! は~い、御嬢様の仰せの通りに致しますぅ』
「命令って、それだけかいっ! しかもアダモちゃん喋ってるし! 魅了されてるし! 自立思考行動型ゴーレムですかっ!」
「サッチャンの言葉遣い、メッ! ですよ」
「……はい」
『メッ!』
「アダモに言われたないわっ!」
★ 〇 ▼ 〇 ★
『未踏のダンジョン11階のビートルを倒し、ビートルの角を10本納品する事』
エリザとエリシャナは2人きりで『未踏のダンジョン』に潜ります。
既に踏破した階を、2人きりなので慎重に11階まで進みました。
寄り道をせず、余計な魔物を倒さないで来ましたが、1時間以上掛ってしまいました。
「なんだ、お前達はクソ真面目に踏破済みの階を歩いてきたのか?」
「「はい」」
エリザとエリシャナは、例の髭面男のグループに再び11階で会ったのでした。
「10階からは1度攻略した階に転移して来る事ができるんだぞ。俺達も今回初めて気付いたんだがな。あっはっはっは~」
「そ、そうなのですか!?」
「ほら、そこに魔方陣が有るだろ。地上に転移する魔方陣だそうだ」
「まぁ、そうだったんですかぁ」
「それじゃあ俺達は、先に行かせて貰うぞ。お互い頑張ろうな」
「はい、ご親切にありがとうございました」
男は手をヒラヒラと振りながら、先に進んでいきました。
『未踏のダンジョン』の11階は昆虫ゾーンでした。
草原と森が広がっていて、とてもダンジョン内とは思えません。
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