第12話 バステトって?

「お母様、マリエルは良い子でしたね」


「はい。困ってる者に声を掛け、助ける事が出来る良い子ですね」


「上げるのでしょう?」

「はい。私への心遣いへのご褒美を上げましょうね」



 マリエル達が馬車で去ったあと、母子がそんな会話をしてました。


「それでは帰りましょう」


「はい」


 シュィイイインッ!


 2人は何処かへ転移して行きました。



 ◇ ◆ ◇



「今日も皆一緒に草原に行きましょう」


「「はい、お嬢様」」



 私は昨日と同じメンバーで馬車に乗り込み、南の草原へ出かけました。

 とても良い天気で晴れ渡っています。


 馬車の中でステータスウィンドウを確認します。


「まぁ、光属性魔法と土属性魔法がレベル5になってるわ!」


「お嬢様、人族の魔法の限界はレベル5迄と言われているのです」


「錬金術と採取と採掘と調教もレベル5になってるの!」


「まぁ、凄いですお嬢様。すでに一流の魔法使いです」



「俺は火属性魔法レベル2だよ」

 とケンちゃん。


「私は風属性魔法レベル3です」

 専属護衛騎士ルイスが言いました。


「私はまだ生活魔法しか使えません」

 専属側仕えメアリィが言いました。



「キュルキュル」


「ピーちゃんは、水と風がレベル2だねぇ」


 マリエルだけはカピバラのピーちゃんと会話ができるようです。


「キュルキュル」



「こんなに早くレベル5に成るなんて、寝ている間にもレベルが上がる事があるのかしら?」


「……どうでしょう?」



「よ~し、今日も頑張っちゃうよ~!」


「「はいお嬢様」」

「オッケー」

「キュルキュル」




 馬車は南の草原に着きました。

 昨日と同じ様に採取と狩りをします。



「薬草を【採取】!」


 シュィイイインッ!



「鉱石を【採掘】!」


 シュィイイインッ!



 ホワンと光ってる緑色や黄色の輪に向かって、手の平を向けてスキルを唱えると、触れなくても簡単に収集できます。


「わ~い、楽チン楽チン!」



 マンドレイクも【採取】スキルを使うと叫ばれる事なく採取できました。


「耳栓が要らなくなったね~♪」


「そだねぇ、マリちゃん。あっという間に沢山取れるねぇ」



 角ウサギと青スライム、赤スライムも狩りました。

 今日は残念ながらヘタレスライムは出現しませんでした。


「やっぱり普通の魔物を狩っても中々レベルアップしないねぇ」


「そだねぇ、マリちゃん」



「ふ~っ、今日はこれぐらいで帰りましょうか?」


「「はい、お嬢様」」



「マリちゃんのスキルのお陰でめっちゃ採取できたよ!」


「そうだね、ケンちゃん。いっぱいポーションが作れるね」


「うん」



 私達は馬車を停めた所まで歩いて戻ります。

 馬車に乗り込もうとすると、反対側から何かの鳴き声が聞こえてきました。


「ミャアアゥ、ミャアアゥ、ミャアアゥ……」


「捨て猫かしら。どうしましょう……」


 見に行くと、黒い猫耳の幼女が籠の中で鳴いていました。


「ヒャァウッ、カワィィィ!」


「1歳ぐらいでしょうか、お嬢様?」


「そうかもね」


 周りを見回しても誰も居ません。



「このまま置いていって魔物に襲われたら可哀想だから、一緒に連れて行きましょうね」


「「はい、お嬢様」」



「マリちゃん、この子も飼うの?」


「まだ分からないわ。ルイス、迷子の届けを出してくださいね」


「はい、お嬢様」



「ケンちゃん回復薬を1本頂戴な」


「はい、どうぞ」



 私は黒猫耳幼女に回復薬を与えました。

 私の手の平に少しづつ垂らし、幼女に舐めさせたのです。


 ピチャ、ピチャ、ピチャ、ピチャ……、


「とりあえず、これで帰る迄は大丈夫でしょうか……」



 ◇ ◆ ◇



 私達はお城に帰って来ました。

 子猫ちゃんに温めたミルクを飲ませて上げます。



「とりあえず、この子に名前を付けましょうかぁ? カッコ仮名っていうやつよねぇ」


「う~ん、猫と言えばタマかな~」


「スズちゃんにしましょう。何故か可愛い猫耳娘のイメージが湧いてくるの!」


「ふ~ん、そう言われてみれば俺もそうだなぁ。ラーメンも食べたくなっちゃった」



「本当の家族が見付かる迄、スズちゃんでちゅよ~」


 ピッカァァァァァンッ!


「ヒャッ!光ったわ!」


「マリちゃん調教スキルが有るから、従魔契約しちゃったんじゃないの?」


「えぇっ、そうなのぅ?」


「鑑定してみたら?」


「うん。スズちゃんを【鑑定】!」


 ピッキィィィンッ!



「本当に従魔に成ってるぅぅ! しかも種族が『バステト』って書いてあるわ」


「猫人族とか猫耳族じゃないの?」


「うん。他には何も表示されてないわね……」



 私は厩舎から真新しい寝藁を貰ってきて籠に入れ、上からシーツを被せました。

 そして私のベッドの横に置きます。

 5歳になった私の部屋とベッドはとても広いのです。


「それじゃあ、おやすみなさい」


「おやすみ~」

「キュルキュル」

「ミャ~ゥ」






「エイルちゃん、こんばんは。

 各スキルがレベル5に成りました、エイルちゃんのお陰だね、ありがとう。

『バステト』と言う種族の幼女を拾い『スズ』と名付けました。

 御両親が見つかります様に。

 いつも見守ってくれて、ありがとう。

 おやすみなさい。

 親友マブダチのマリエルより」




「マリエルちゃん、こんばんは。

 スキルレベルが上がって良かったね。

 ところで『バステト』は猫の女神だったはずですよ。

 管理外なので詳しくないのですが、人間を病気や邪悪な霊から守る慈愛にみちた女神と言われています。

 又、豊穣・性愛の女神で音楽とダンスを好むそうです。

『虹の橋ビフレスト』から地上に迷い出たのかも知れませんね。

 私も彼女の家族を探して見ます。

 それまで預かってくださいね。

 おやすみなさい。

 親友マブダチのエイルより」

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