スキルを極めろ！

342 怪しいフードの男

　酒場に来ていた。情報収集のためだ。

　教国の教義なのか、あまり堂々とした看板は出ていなかったが、結構大きな店だ。大通りで、この辺で一番大きな酒場を聞いたから間違いない。

　酒場はランプで照らされてるだけなので結構薄暗い。同じテーブルにいたら顔はわかるだろうけど、隣のテーブルだとわからないかもしれない。

「おい、勇者の召喚ってどうなったか知ってるか？」

「ああ、何か手違いで儀式が中断されたんだってな。女神様の神託をなんだと思ってるんだか」

　何？勇者召喚を失敗した？それって大事じゃないか。なんで俺が知らないんだ？

「でもまたやり直すんだろう？必死になって魔術師を集めてるって話だぜ？」

「そりゃそうだろうよ。失敗しましたすいませんじゃ済まないだろうしな。国としてもメンツがあるからなんとしてでも成功させるだろうよ」

「でもそれじゃあ魔族との戦いには間に合わないんじゃないか？勇者って言ったって最初から戦えるわけじゃないだろう？」

「そりゃそうだろう。どの世界から召喚するのか知らないけど、魔王と戦えるほど強いのがどれだけいるってんだ。

　だけど、召喚されてから訓練したってどれだけ強くなれるのやら。俺たちだって真面目に冒険者しててもCランクがせいぜいだぜ？元からSランクとかの実力がなけりゃ、この世界で魔物倒してたって魔王と戦うのは無理だろうよ」

　ふむ。勇者が最初から強いかどうかもわからないと。でも女神様が神託で召喚するなら最初から強い可能性も高いんじゃないかな？

　女神様から力をもらったとかなんとかで。

　でもこの世界のスキルはLv10がいない位に低い。果たして女神様が召喚した勇者がそれ以上の力を持つもんだろうか？

「それにしても女神様はすげーよな。

　召喚陣？とかいうのを神託で教えて異世界人を呼び寄せるっていうんだからな。異世界なんて初めて聞いたときは何の事か分からなかったぜ」

「そうだな。正直今でも分かってないけど、魔王対策のための勇者だ。元の世界でも実力者が来るんだろうな。やっぱりSランククラスなのかな」

「いや、女神様が呼ぶんだ、SSS位あるんじゃないか？」

「そんなランクないだろうがよ」

「ははっ、それくらい強い奴がくればいいなって話だよ！」

　召喚に失敗した原因の方が気になるんだが。

　女神様が指示した通りに儀式を行えば普通に召喚できると思うんだが。母国？を悪く言うつもりはないが、何してんだろうね。

「それよりもよ、またSランクが消えたって話聞いたか？」

「何？またか？！今度は誰だ？」

「氷帝らしい。あの氷の女王様だ」

「え、氷帝って言ったらSランクオーバーだと言われる冒険者じゃないか。それがやられたのか？！」

「魔族にやられたって保証はないが、氷帝が負けるならドラゴンクラスだろう？そんな話はなかったらしいから、やっぱり魔族じゃねえのか？」

「たーっ、やだねえ。今頃高ランク冒険者はいつ襲われるか怯えてるんじゃねえか？」

「かも知れねえけど、俺たちにゃ関係ねえな。なんせCランクだからな！」

「ちげえねえ！」

「はっはっはっ！」

　またSランクがやられたのか。元々何人いたのか知らないけど、そおそろ打ち止めじゃないか？

　ガチャ

　うん？客か？いや、この魔力は。。。

「店主、エールを」

「ヘィ！」

　一番奥に座ってエールを頼んだ客だが、フードに隠れて顔が見えない。だけど魔力が相当高い。少なくともAランク。多分Sランククラスだ。

「店主、何か情報はないか？」

　フードの男はテーブルに金貨を置くといきなり情報を求めた。ここは普通の酒場だから情報屋とかに行った方がいいと思うんだが。

「そうですねえ。Sランク冒険者のジンって奴が教会と契約したらしいぜ。こないだも魔族を撃退したって発表があったしな」

「そのジンってのは強いのか？」

「Sランクだから強いだろうよ。それにドラゴンを倒したとか言う噂もあるしな」

「そいつはまだ教会にいるのか？」

「いるんじゃないか？他の街に行ったって話も聞かないし」

「そのジンってのは男だな？」

「そりゃジンって名前なんだから男だよ。ジンって名前の女は聞いたことがねえよ」

「それもそうか。そのジンってやつの家族とかはいないのか？」

「結婚してるらしいけど詳しくはわかんねえな。何年か前にドラゴンを倒したって言う噂は聞いたけど、ここしばらくは噂もなかったしな。こないだ魔族を倒したってのが久しぶりに聞いた話だったな」

「そうか。助かった」

　そう言ってもう一枚金貨を置いて出て行った。せっかくエール注文したんだから飲んでいけよ！

　でも俺の噂を集める奴がいるのか。魔力が高いから魔族の可能性もあるが。。。ちょっとつけてみようかな？