273 オークの納品


 探索者ギルドの依頼板からオークキングの睾丸の依頼を剥がし、受付に持って行く。


「この依頼の納品をしたいのだが?」


「これはオークキングの睾丸ですよ?倒したんですか?」


「倒さずに睾丸を得られる方法があるのか?」


「いえ、ただの確認です。20層に到達したことを認めます。

 それと、こちらが納品分の金貨20枚になります。

 他に用件はありますか?」


「ああ、オークの肉も引き取って欲しい。途中で結構倒したからな。まとめて買い取ってもらえると助かる」


「分かりました。こちらの解体室で出してください」


 そう言って奥の方に案内された。


 裏の方は倉庫になっており、今もいくつかの魔物が解体されている。


「ではこの辺にオークを出してください」



 オークが150体分、オークアーチャーが3体分、オークマジシャンが4体分、オークリーダーが10体分、オークジェネラルが10体分、オークキングが1体分だ。


「え?これを全部倒したんですか?」


「ああ、20層まで行く途中で倒したやつだ。買い取ってくれ」


「ちょ、ちょっとお待ちください。これだけあると、解体の責任者に確認しないと」


 受付嬢は奥の事務所のような場所に行って、筋肉ムキムキの男を連れてくる。


「おお、これがオークか。かなりの量だな。解体には時間がかかるぞ?それでも良いか?」


「もちろんお任せします。買取出来ないということはないんですね?」


「ああ、大丈夫だ。肉はいつでも品不足だしな。そうだな、3日後には報酬を受け取れるようにしておくから受け取ってくれ」


 やはり専門家だね。これだけのオークを目にしても正確な解体予定を頭の中で立てている。

 いくらくらいになるんだろうね。




「ああ、ジンさんは9級に上がりましたので、更新します。少しお待ちだください」


 おお、今回ので20層に行けることを証明したってことだな。それにしても9級か。最前線の20層に行っても9級までしか上がれないとはね。魔力なしを舐めるな!




 と怒鳴りたいところだけど、現状何の問題もないし、探索者ギルドのランクを上げる必要性も感じてないので問題ない。



 当座の資金は確保したが、セルジュ様がいくら借金をしたのか把握してないので、これだけでは不安だ。俺の探索費用なんて白金貨単位だろうかな。


 さて、依頼は、と。



『幽霊屋敷の調査 解決してくれれば金貨10枚 一晩問題がなかったら最低でも銀貨10枚保証』


 まだあるとは思ってたけど、もういらない。



『カンカルーの腹袋 金貨10枚 状態が良いものに限る』


 ふむ。腹を傷つけずに倒せば良いのかな?何に使うのかは知らないけど候補には入れておこう。



『跳びコーンの採取 銀貨1枚/1kg 継続的に納入してくれる方を優先』


 跳び、の意味が分からんが、コーンというからにはとうもろこしなんだろう。食料としての納品ということかな。

 跳びコーンという名前なのかは知らないが、ダンジョンのマップを作っている際にとうもろこし畑は発見しているので採取は簡単だろう。これはダンジョンの帰りに適当に採取して納品しよう。継続性は無視だ。



『丸ウサギの捕獲 銀貨30枚 ピンク 傷ついたものは買い取れません』


 丸ウサギというのはモルモットのように小さなウサギの事だ。貴族の子女のペットに人気らしい。いろんな色の種類があるそうで、同好の士で集まって愛でたりするらしい。

 ただ、素早くて捕まえるのが難しい上に、傷つけたらダメだという制限が厳しいので依頼が残っている。



『24層の地図 金貨20枚 階段や魔物なども載っている完全なもの』


 トップの冒険者が出した依頼らしい。自分たちが最先端なんだから自分でなんとかしろと言いたい。



『ゾンビの目玉 銀貨20枚 赤の瞳孔のみ 左右セットで』


 うえ、ゾンビか。何かの研究用なんだろうけど、ゾンビとは戦いたくないな。あれの匂いはひどいからな。

 それとゾンビのいそうな場所には心当たりがある。ダンジョンの中に洋館が立っていたのだ。しかも裏庭には墓地が。これはアンデッドがいますと言ってるようなものだったので探索しなかったが、おそらくあそこだろう。



『ゴブリンジェネラルの胆嚢 銀貨40枚/10個 新鮮なものをお願いします』


 ふむ。ゴブリンジェネラルは出現数は少ないが、10体ならちょっと頑張れば達成できそうだ。それに新鮮なものという条件も<インベントリ>を使えば可能だ。これも候補に入れておこう。



 あ、ゴブリンジェネラルの依頼書持って行くんじゃねえ。俺が納品するつもりだったのに。狼の獣人が依頼書を持っていってしまった。おそらく集めてきたのだろう。


「ちょっと、これは古すぎますよ。新鮮なものって条件に書いてあるでしょう?」


「そこをなんとか!古いのは一つだけで後はいけるだろう?なんとかならねえか?」


「なりません。依頼者の指定は新鮮なものなんですから。もう一つ集めてきてから来てください」


 どうやら新鮮なうちに10体倒せなかったようだ。


 おお、受付嬢が依頼票を貼り直した。これで俺も受けれるな。




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