236 今後の方針
使節団と話している時に、俺はどの国の代表としているのか疑問に思った。
人間大陸のどの国にも行ったし、トップとも会っている。だけど、じゃあどこの国の代表なのかと言われたらどこでもないとしか言いようがない。うん?ヤパンニはトップと会ってない気がするな。まああの国は未来がなさそうだし良いか。
強いていえば、リリアとメアリーの所属するザパンニ王国だろうか。
しかし、俺に帰属意識はない。
神様からの試練(スキル上げ)があるからイングリッド教国かと言えばそうでもない。どうやら俺にスキル上げの依頼をしたのは創造神様のようだしね。
ならば創造神様を祭り上げている獣人国かというと、それもない。俺は獣人じゃないから信用もないしね。
アズール帝国なんて、遺跡の件で苦手意識を持っているくらいだ。俺の一年を返せと言いたい。
そんな俺がどう思っているかというと、どこにも属さない、だ。
全ての国を廻ったから思う。どの国に所属しても一緒だと。それぞれいろんな問題を抱えており、俺に依頼してきた。それで良いと思う。俺はどの国にも所属せずに一冒険者として世界を回るのが性に合っていると思う。
そして、獣人大陸という新たなフロンティアが与えられたのだ。それを満喫せねばなるまい。まあ、発情期だけはなんとかしたいものだが。
「という訳なんだが、何か思うところはあるか?」
「私に聞きますか?!私はザパンニ王国の王女ですのよ?ザパンニに帰属して欲しいのは当然ではないですか。そのためにジン様との縁談を望んでいるのですから。今からでも遅くはないですわ。ザパンニに戻って結婚しましょう?」
「それは置いといてだ、リリアはどうだ?」
「置いとかれるんですのね。最近私の扱いひどくないですか?」
「全て縁談に持っていこうとするからだ。それでリリアは?」
「私は結婚した時点でジン様と将来を共有することを選びましたわ。実家は大切ですが、別にザパンニ王国に縛りつけるつもりはありません」
俺はそれを受けてメアリーを見る。
「わ、私も縛り付けるつもりは、、、ありますが、、、でも、、、」
どんどん細い声になって行くが、メアリーが俺という戦力をザパンニ王国に縛り付ける鎖として送り込まれているのはわかってる。メアリーが自分でどう思っていようがそれは変わらない。
特に今、獣人族という未知の国との交渉が続いているのだ。自国の安全のためにも俺の戦力は手にしたいだろう。他の国もその傾向にはあるが、一番欲しているのはザパンニ王国だろう。
ヤパンニ王国?知らんよ。あそこは早々に亡くなってもらいたい。
「さて、これからなんだが、俺は東のダンジョンに行ってみようと思う。マリアとクレアは連れていこうと思う。
リリアとメアリーは一度国に戻った方が良いと思うんだが、どうだろうか?」
セルジュ様はこの場にはいないので後で話をするつもりだ。俺たちとの関係も微妙なものがあるしね。
「え、私たちは連れて行ってもらえませんの?」
「ああ、ダンジョンはかなり凶悪な作りになっているようでな、お前たちでは足手まといだ。暇するくらいなら一度国に戻っても良いかと思ってな」
「それはどの位の期間ですの?一月くらいなら近くの街で待ちますわよ?」
「分からないな。結構深いみたいだから時間がかかるとは思うが」
「でしたら余計に私たちも連れて行ってくださいまし。掃除洗濯なんでもしますわ!」
「ああ、留守を守るという手もあるのか。だが、ダンジョンに潜っている間は暇だぞ?」
「それこそ何か趣味を持ちますわ。ねえリリア?」
「そうですね。最近は刺繍もやってませんし。メアリーもやってみますか?」
「そうですわ。教えてくださいまし」
何か慌ててるな。なんだろう。
「それで本音は?」
「一人で帰ったら何を言われるか、、、いえ一人じゃ寂しいですわ!」
どうやら使命を果たさずに戻ったら何か言われるらしい。まあビッチと言われてるから戻っても嫁ぎ先はないだろうしな。
「国に戻って婚活しても良いんだぞ?」
「ビッチな私と結婚してくれる貴族がいるとでも?わかってて聞くのはひどいですわ」
「ははは、そう言うな。俺に脈がないのはわかってるだろう?いつまでも俺につきまとってたら本当に行き後れになるぞ?」
「国ではすでにジン様の妻と認識されていますわ。正式に結婚してなくとも周りがそう思っていたらそういうことになりますわ」
こいつ、周りを固めてやがる。長いこと俺と行動を共にしているのもその補強のためか。結婚しているのだから行動を共にしてるのは当然と。つまり、一人で帰るとそれを否定することになると。
なるほど、一人では帰れない訳だ。
仕方ない。マンスムの町までは連れて行くか。
遺跡で一年も帰らなくても待ってたんだ、ダンジョンにいる間くらい待てるだろう。
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