234 ゴブリンの報酬
魔力溜まりから光が溢れ出し、目を開けていられないほどになる。
「お主が主上から試練を与えられし者か。お主に関する神託を受けた。心して聞くように」
どこからともなく響く声が俺の耳に入る。いや、正確には耳ではなく直接頭に聞こえてくる。
「大陸の東、絶望のダンジョンにお主の成長の鍵になるものがある。それを手に入れるように」
絶望のダンジョン?聞いたことがないな。それに成長の鍵?スキル上げに必要なアイテム?よくわからん。
「以上だ。お主は元の場所に戻そう」
「おい、ちょっと待て!まだ聞きたいこと、、、」
言葉の途中で転移させられてしまった。
目の前にはマリアとクレアが周囲を探し回っている様子が見える。
「マリア、クレア、何かあったのか?」
「ジン様!急にお姿が消えたので探していました」
「大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない。ちょっと転移のトラップに引っ掛かっただけだ。転移で戻ってきた」
自力ではないがまあいいだろう。
それよりも先を急ぐぞ。俺のせいで遅れたのではたまらん。
「「はい」」
それからも進んだが、魔力感知には全く引っかからず、ゴブリンのゴの字すら見つからない。
その間にも俺は考察を進める。
あの魔力溜まりは神託があったと言った。どの神からかは知らないが、おそらくは創造神だろう。
聖女を経由せずに神託をしたというのは他のものに知られたくなかったという事か。だとすると俺だけで行った方がいいのか?
だが、ダンジョンでは1日で終わるわけもないので、チームは必要だ。
それになんと言ったか。成長の鍵になるものを手に入れるように、だったか。神が俺に成長の鍵というからにはスキルアップに必要ななんらかのアイテムがあるのかもしれない。
そろそろスキルも上がりにくくなっており、何かのブレイクスルーが欲しかった所だ。
獣人のスキルにも興味があったが、わざわざ神託という方法を取ったのだ、急いだ方がいいだろう。王都に戻ったらすぐにでも東に向かおう。
森を抜け、待ち合わせの場所で他のチームを待つ。
俺のチームが一番距離が短いので最初に着くのは想定通りだ。
他のチームが戻ってきた。
ゴブリンを3匹見つけたので狩ったそうだ。他には見つからなかったから、はぐれでいいのではないかという意見だった。俺にも反論はないので全員で俺たちの通ったルートを戻る。
目的のゴブリンは倒したのだからもう分かれて移動する意味もない。
「ゴブリンはすぐに見つかったのですか?」
「ええ、俺たちはわざと音を立てて進んでいましたので、それに寄ってきたんだと思います。餌だと思ったのかもしれませんね」
そうか、ゴブリンは音を立ててると寄ってくるのか。知らなかった。基本的に魔物は魔力感知で索敵するものだと思っていたので気にもしていなかったが、他の冒険者はこうやって魔物を釣り出すのか。
いくらパーティとはいえ、狭い範囲しか索敵できない者が何人集まっても目的の魔物が探せる確率は低い。ならば何か方法がないと、何度も森に入って低い確率に当たるのを待つしかなくなる。
そんな行き当たりばったりな討伐では話にならないだろう。特に獣人は魔法をうまく使えないようなので、魔力感知を使えるものも少ないんだろう。
「俺たちは森の真ん中くらいで肉を焼きました。匂いは結構広がるのでゴブリンだろうとオークだろうと寄ってきますから。それで1時間ほど待ったのですが何もこなかったので、集合した次第です」
なるほど、肉を焼く匂いでも釣れるのか。これも勉強になるな。おそらく森に入るものには当然の知識なんだろうけど、パーティを組む事のなかった俺には知らない事だらけだ。
というか、森の中では肉は焼けないのか。あったかいオークステーキはうまいんだが。
俺たちが村に戻ると、フェリス様に報告していた。
「、、、という事です」
「ご苦労様です見かけたゴブリンで間違いないでしょう。村長、これで安心できますよ」
「ありがとうございます。これは少ないですが、、、」
村長がフェリス様に何か渡そうとするが、フェリス様は受け取らない。
「ここは王領です。ゴブリンの退治は領主の仕事。報酬を受け取るわけにはいきません」
なるほど、冒険者なら報酬をもらって当然だという印象があるが、騎士なら話は違うのか。そういえば獣人大陸では魔物は特定の場所に集まっているので、冒険者はおらず、盗賊対策のために傭兵がいるだけだったか。
そしてはぐれの魔物の討伐は領主の仕事と。
うん、ここが獣人族の大陸だと改めて思ったね。
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