スキルを極めろ！

197 発見

食料を補給した俺は、朝から魔の森に来ていた。マリアはお留守番だ。

魔の森に入って5日ほどか。一口に5日とは言っても冒険者のレベルによっては、進行距離に大きな違いがある。距離さえ分かっていれば空を駆けて大まかな場所を特定するんだが。

仕方ないので、俺は素直に歩いて森に入る。俺が普通に5日歩けば少なくとも距離が足りないと言うことはないだろう。

戦闘の跡を探しながら、蛇行しながら歩いていく。端の方ではゴブリンやゴブリンリーダーしか出なかったが、2日目からゴブリンジェネラルやオークジェネラルが出始めた。この辺は奇襲さえ受けなければ全く問題ない。

前に瘴気にやられた男を探しているときに魔力は覚えたので、何がいるか判別できる。

この辺なら俺の魔法の障壁で間に合うので、一人でも寝れる。

特に戦う必要もないので、迂回してスルーする。3日目になると、ゴブリンキングやオークキングなどが出てきた。もちろんお供を伴ってだ。ゴブリンキングなどは300体くらいの団体だろうか。これが森から溢れたら厄介だろうな。

だけど、今回の捜索はもっと奥だ。

ここに群れが残っていると言うことは、ラノスとやらは避けて行ったのだろう。なんのために森に入ったのだろう？修行ならゴブリンの集落を襲っても良さそうなものだが。もしかして、一番奥にいると言う竜を倒しに行ったのだろうか？無謀な。

帰ってきたパーティメンバーからは全滅したことは聞いても、なんの魔物にやられたかは聞き出せなかったらしい。

ゴブリンの集落に潰されてたんだとしたらSランクも知れてるな。探す価値もない。

4日目になって、戦闘の跡らしい痕跡を発見した。木がその辺だけ焦げている。火の魔法だろう。森の中で火はダメですよ。減点。

血の跡は残っているが、死体は残っていない。どこかに引きずっていかれたのだろうか。狼系の魔物ならありえるな。

その後は何箇所かで戦闘の跡があった。最後に見つけた戦闘痕にはオークキングと思われる死体が残っていた。肉が食われてぐちゃぐちゃだが。大きさから考えて間違いないだろう。

これだけ近い範囲で戦闘が行われているのだ。この辺で戦闘を解禁したのだろう。彼のパーティのレベルは知らないが、ワイバーンを一体倒せるレベルでよく戦っていると思う。

少し先でも戦闘の跡があった。魔物の死体がない代わりに、人間の死体と思われるものがあった。３人分だ。顔もわからないくらいめちゃくちゃだが、装備は残っている。立派な鎧がラノスだろう、なんとなく覚えがある。

全員の懐を探ると、財布にギルドカードが入っていた。首からかけるんじゃないんだ。それによると、やはり立派な鎧がラノスで間違いないようだ。ちなみに財布には白金貨も入っていた。この場合、財布の中身は誰のものだろう？

死因はなんだろうか？牙の跡とかもあるが、死因なのか、死んだ後に食われた跡なのか区別がつかない。仕方ないので、３人分の遺体をアイテムボックスにしまう。

これで依頼は完了だが、後ろにはゴブリンの集落などがあり、面倒そうだ。

俺は空を歩いて帰ることにする。

空中散歩と洒落込んでいると、近づいてくる魔力があった。かなり早い。

反射的に下を探すが、木が揺れてる感じもしないし、何が近づいてきているんだろうか？

俺は『上から』襲われた。鳥型の魔物だ。

飛べる魔物はワイバーンくらいしか見たことがなかったので油断した。

顔を狙ってきていたが、運よく目は外れて額に当たった。俺も魔物も衝撃に吹き飛ばされる。やば、この下は確か、、、

ゴブリンの集落だ。それもど真ん中。

俺は慌てて剣を抜き、<飛剣>で周囲を薙ごうとしたが、近くにもゴブリンがいて、十分に溜めが作れない。ゴブリンは武装していなかったらしく、爪で襲ってきた。ゴブリンの爪は大して長くないが、なんだか不潔に感じるので、病原菌とか持ってそうだ。特に麻痺毒とかは持ってなかったはずだが。

俺は手近なゴブリンをサクサクっと倒して、風魔法で周囲を薙ぎ払う。ゴブリンが半分ほど減っただろうか。

俺にようやく気付いたのか、ゴブリンキングとゴブリンジェネラルがこちらに走ってくる。

距離があるなら楽勝だ。<風魔法>で腹を狙う。首を一度に狙うには高さが揃ってなかったのだ。

3体とも切り飛ばしたつもりだったが、一番後ろにいたゴブリンキングが生き残った。しぶとい奴だ。再度同じ場所に<風魔法>を当てて上下に分断した。

ゴブリンキングがやられると、ゴブリン達は一斉に逃げ出した。後ろから<飛剣>を放つが10体ほどしか巻き込めなかった。ゴブリンの討伐が仕事ではないので放置だ。

ゴブリンの魔石と右耳を切り取っていくが、俺の注意は上に向いていた。

さっきぶつかった鳥の魔物が近くにいるかも知れないのだ。空を飛んでいたスピードからして、<風魔法>では速度が足りないかも知れない。正面からぶつければいいか。うまくいけば３枚におろせるだろう。

ゴブリンの魔石なんて今更必要ないのだが、貧乏性なのか、もったいないと感じてしまう。魔石を剥ぎ終わった頃には夕焼けが顔を出していた。俺は近くで野営するか、空を駆けて一気に魔の森を出るかで悩んだが、一気に出てしまうことにした。

鳥型の魔物が鳥目なのかは知らないが、魔力感知に引っかかるなら発見次第、森に逃げ込めばいい。流石に暗い中で飛ぶ相手と戦闘したくない。

魔の森の外で魔法の結界を張って、一眠りしてからフレイアに向かった。