118 温泉 (2)
しばらくすると、女湯から声が聞こえてきた。
「こんな広いところで湯に入るのでしょうか?いくら女同士といえ、破廉恥ではありませんか?」
これはメアリーだな。
「まあ、王宮のお風呂も広いでしょうに。他の方と入ったことはありませんの?」
リリアだな。リリアは他の人と風呂の経験ありと。
「小さい頃はメイドに入れてもらっていましたが、ある程度自分でできるようになってからは一人ですわね。
それに、湯にゴミが浮いていますわよ?汚いのではありませんか?」
「あれは湯の花と言うそうです。温泉の成分が固形化したものだとか。体にいいらしいですよ?先ほど女将さんに聞いてきました」
これはマリアだな。
ザパン
「クレアさん、体を洗ってから入ってください!みんなで入るんですよ!?」
「すまん、はしゃぎすぎた」
クレアが洗いもせずに飛び込んだらしい。
「メアリー、背中を流しますわ。そちらに座ってくださいな」
「私がお背中をお流しします。リリア様もそちらに座ってください。メイドの私がお背中を流さずに誰が流すんですか?!どうぞお任せください」
まだ聞いててもいいのだが、楽しそうではあるが、ここは折角独占しているのだ。静かに入りたい。
俺は入って右の、奥の方に移動した。温泉の中に岩が配置してあり、その陰に入るといい感じに座れる。
熱燗をクイッと行きたい気分だ。
空が夕焼けから夜に変わる。
星が綺麗だ。
ここまでは女湯の声も聞こえて来ず、実に平穏な時間だ。
そんな時、入り口付近から大きな声が聞こえてきた。
「お客様、困ります!こちらは女性専用です!それに武器を持ったままはご遠慮ください!」
女将のようだ。
「ケチケチすんなよババア。ちょっと挨拶するだけだろうが」
「きゃーーー」
「なんで男の方がこちらに。。。」
どうやら武装した男が女湯に入っていったらしい。
俺も覗いてないのに、堂々と覗きなど許されん。
俺は一度脱衣所に戻って、服を着てから女湯に向かった。
女将と男性はまだ言い合っているようで、女性陣は湯の中だ。
「おい、おっさん、覗きはこっそりするから情緒があるんだぞ?堂々と入るのは変態だ」
「なにぃ、お前に言われる筋合いはねぇ。女4人も連れて旅しやがって!」
俺たちが一緒に旅をしているのを知っているらしい。
誰から聞いたんだろうか?見張ってた?まさか。
「別に誰と旅しようととやかく言われる筋合いはない。
おい、変態。これ以上女湯にいるようなら排除するぞ?」
「やれるもんならや、、、」
俺は鎧の上から腹を殴った。
「グォ。。。」
もう一発。
「ゲホォ。。。」
崩れ落ちた男の首根っこを捕まえて女湯の外に連れ出す。
「女将さん、この男どうしましょうか?」
「はい、従業員が警備のものを呼んでますので、引き渡していただけると助かります」
「わかった。
おい、変態。お前はおとなしく捕まって反省しろ」
「女将さん、なんでこんな事に?」
「この方もお客様なんです。ちゃんとお金を払われているので。ただ、お金を払った後、装備も外さずに温泉に向かったので、後を追いかけたら、ご覧の通りで」
「こんな事よくあるのか?」
「ええ、数回ありました。ゴロツキが払えるような金額ではないはずなんですが、毎回ちゃんとお金は払うんです。なので警備に引き渡しても罰金ですぐに釈放されてしまって」
「宿の信用に関わるだろうに。断らないのか?」
「お金を払わないならともかく、身なりが悪いだけではお断りできません」
「それもそうか。お、警備が来たようだな」
俺は男を警備に引き渡して、連れていってもらった。
折角いい気分んだったのに台無しだ。
「お客様、この度は申し訳ありませんでした。そしてありがとうございました。今日の夕食は精一杯サービスさせていただきます」
「それなら酒を一杯サービスしてくれ。それで十分だ」
「しかし、、、いえ、ありがとうございます。一番いいお酒をサービスさせていただきます」
しばらくすると、女湯の方から、4人が帰ってきた。
「災難だったな。男は警備に捕まったぞ」
「そうですか。あんな男、極刑にすれば良いのに」
マリアが怒っている。
「でも高級旅館なのにあんな客もいますのね。今度からは気をつけませんと」
いや、普通いないからね?
それにしても、何回もあんな事があったのか。これから一月近くいるつもりなのに、何度もあんなのが来られるとゆっくりできないな。
何度もあるっていってたし、宿代も払える、罰金も払えるのであれば、ゴロツキなんてやってないだろうし、誰かがバックにいるな。普通に考えると商売敵なんだろうが、、、考えても仕方ないな。今度同じ事があったら、徹底的に尋問してやろう」
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