地平線に棲む魔物

 いつか見えるだろうか。


 ビルの狭間を掻い潜った先、山に遮られそいつは見えない。


 見ると魅入られると言われているそいつは既に僕を魅了している。


 しかし僕はそいつを視たことがない。


 海に出てはそいつを探し、山に登ってはそいつを探し、教室の窓越しでさえそいつを探す。


 いつか写真で視たそいつは、僕を嘲笑うかのように隠れている。


 家、ビル、雨、雲、あらゆる物はそいつを僕から隠す。


 しかし僕は負けない。


 野を越え山を越え、家を越えビルを越え、海を越え陸を越え。


 いつかそいつに会いに行ってやる。

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