詩音

 熱い泡が私を包み込む。


 皮膚を介して伝わるその熱は、血液を、肉を、髄を鈍らせる。


 その心地よさに心奪われると、微熱が上がる。


 刃。


 あまりに鋭利なそれは、視覚に頼らずとも理解できてしまう。


 空を切るより静かな音が皮膚を揺らす。


 断てれば肉を裂いてしまう。


 温まった血潮が心臓の音頭に合わせて噴き出てしまう。


 そんなものを、そんなものに身を委ねてしまう。


 無用の長物を刈り取る音がする。


 刈り取る。


 音がする。


 刈り取った。


 この十分間が、私の異楽。

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