閑話1 第六師団長お土産を貰う
エルメンティア王国第6魔法師団の師団長は、エディオン・ガト・メルティデス。
どんな見た目かと言うと、キノコ頭の、あんまり仕事もやる気なさそうに見えるおじさんだ。
愛妻一人、愛娘二人あり。
薄い金茶色の物凄い癖毛(もはやチリチリ)をキノコの様に被り、( 本人に言わせれば『生えてんだよ』被ってんじゃねえ ) 定期的に短くするも、だんだんと伸びて傘が広がって行く様を見るのは面白い。
顔は別に不細工な訳でも無いが、いつも黒い丸メガネをかけていて、ひとめ見た時の印象は爆発頭と黒丸眼鏡が強烈すぎて、ほぼ、どんな顔だったかは皆覚えていない。
彼の丸眼鏡は強力な魔道具で、彼自身の邪眼(イーヴィルアイ)をやわらかくするオプション品だ。
メルティデス家は呪術士の家系で、中々闇の深い家であったが、彼の代でそれも無くなった。
それはさて置き、今日は彼の敬愛する麗しの、エルメンティア王国、魔法師団総師団長様がこっそりいらっしゃる予定である。
エルメンティア王国には、精鋭と言われる魔法師団がある。
第1魔法師団〜第6魔法師団まである。
それぞれに師団長が配され、その統括が総師団長となる。
第1〜第4師団までは攻撃部隊
第5師団は浄化、治癒部隊
第6師団はモノ造り隊と言われ、魔道具その他、国の機密に関わる仕事を担っている。
魔力の制御と、賢さが要求される。
その第6師団(ダイロク)の師団長は、珍しく緊張していた。
時間通りに彼の執務室に魔法陣が現れ、傾国と言われる程の美貌の持ち主が現れる。
「ようこそ、ヴァルモントル総師団長、お待ちしておりました」
お辞儀の角度は45°、目を瞑り5秒数え姿勢を戻す。
エディオンは久しぶりに心からお辞儀をした。
「ああ、堅苦しくするな、そなたに土産だ」
たおやかな白い手の平に乗せた紅い魔石を彼の前に差し出す。
「これ…は」
「以前言っていただろう、『竜の寿(ことほ)ぎの歌が欲しいと。此れは、火喰いの寿ぎだ偶々(たまたま)手に入った』
そう言って、紅い魔石をぽとりとエディオンの手の中に落とした。
「魔石(いし)に封じてある。大転移門に使いたいと申していたろう?」
「ああ、総師団長、感謝いたします!」
フッと笑って「ではな」と言い、出現した魔法陣と共に消える。
その消えた場所に向かい、エディオンは深く深く心からのお辞儀をした。
彼の敬愛する、フレデリク・ザクアーシュ・ヴァルモントル公爵は、3代前の王弟である。
彼の知る限り、その容貌は彼の幼い頃から衰えを知らず、麗しいままだった。
先祖返りと言われ、他の王族と比べても桁外れの強大な魔力の持ち主であり、英雄であり、彼の恩人でもある。
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