第16話 学園生活
入学式から数日、僕はすっかり見慣れた寮の自室で目を覚ました。
初日の夜は僅かに残っていた荷物も全て仕舞い終えており、服を着替えながら部屋を見回す。
そうして回した視界に映るのは同室となったロイ、僕は軽く溜め息を漏らしながらを起こした。
「おーい、もう朝だよ。早く起きなよ」
「もう少し……寝る……」
「早くしないと置いて行くよ? 朝ごはん食べれなくても良いの?? 」
「…………あっ、そうだった!! 」
慌てて着替えを初めたロイを他所に、僕は長いこと使っている剣を持って外へ向かった。
多くの生徒は全員食堂へ向かっているのだが、僕の足は食堂では無く玄関……そしてこの街のハンター協会へ向かっている。
何故こうなっているのかは入学式の日の夜、ロベルト・ジェシカの一声により寮の食堂が使えなくなったからに他ならない。
「わりぃ、朝早く起きるのはやっぱ慣れねぇなぁ……」
「今日の朝ご飯はどうする? 」
「あー、今日は確か……向こうの通りで店出してるおっちゃんが安売りしてるはずだぜ。お陰で多分手持ちがギリギリ足りるだろうから……朝はギルドに行かなくても大丈夫だろ」
「分かった、じゃあそっちに行こうか」
「おう」
あの夜から僕達は彼女の下っ端達によって食堂への通行を阻止されている。何も食べない訳にはいかず、僕達は仕方無くから街に出掛けて食べ物を手に入れている。
幸いにもロイがこの街の安い店に詳しい事から何とかやって行けているが、僕からすれば今までデルカでやっていた事と変わらない。僕の学園生活はこうした始まりだった。
――――――――――――――――――――
朝ご飯を買い食いした僕とロイは学園へ向かった。ここはかなり広い校舎だが、僕達は特に迷うこと無く一つの教室へと入る。
その教室には教卓と黒板に、いくつかの机が並べてあるのだが……このクラスは他クラスと比べると生徒数が圧倒的に少ないらしい。
「あー、それにしても昨日は本当にヒドい目にあった……まさか魔物に真正面から突撃するとはよぉ……」
「え? 別に普通じゃない? 」
「デルカじゃ普通かもしれねぇが、こっちだと普通じゃねぇよ……」
「皆さんこんにちは、今日も元気に行きましょーう!! 」
僕とロイを除いた生徒は全員既に席に付いており、僕達が軽く談笑していると担任のキャロル先生がやって来た。この人は入学式で倒れた先生でもあるのだが、もう体調は大丈夫らしく元気な様子だ。
それだと言うのに生徒側は相変わらず、暗い顔で黙りこくっている人が多い。そのせいで『各自の自己紹介は個人個人でやっておいてね』との事なのに、誰とも喋れていない。
そんな様子を知ってか知らずか、キャロル先生はテンションを上げたまま授業を初めた。今日はこの世界の成り立ちについての授業らしい。
「さって、『この世界は遥か昔、神々の手によって創られた』という話は子守唄等でよく耳にしましたよね? 今日の授業では、その話についてもう少し詳しくお話ししますね!! 」
遠い昔……神々は“創生の剣”と呼ばれる一振りの剣を使い“世界”を創り出した。その剣は今もこの世界のどこかにあるらしいのだが、神々は“世界樹”と呼ばれる守護者に守らせ人々の目に付かない所に隠しているらしいとの事だ。
世界を創った神々は次に、人々と動物を放った。
ここまでは他の世界でも同じらしいのだが、神々はこの世界に一つの特徴を持たせる事にした。それは神の力の一端とも言える力……“魔法”を全ての生き物に分け与えたのだ。
その様な事をした理由までは分からないのだが、魔法によってこの世界を生きる物達はその全てが繁栄を極めた。だがその中で一種……人間だけが繁栄せず、魔物達に打ち負かされていた。神より授けられし“魔法”の力を持ってしても。
何故なら人々には魔物と対峙出来る“力”があっても、それを活かす“知恵”が無かったのだ。
知恵を付けようにもそんな余裕は無く、どうすることも出来ない人々は数を大きく減らされて行った。次第にその様子を見かねた神々は直接人を救う事にした。
だがそれは何故か実行されず、結局神々は創生の剣を守る世界樹に“人々に叡智を与えよ”と指示を出す事しかしなかった。
人々はこの世界で生きていく為の“知恵”を世界樹から教わり、魔物に対抗する為に“国”を興すまでになった。
この時には数多くの国が生まれたと言われているが、それらの国は次第に数を減らしていく。何故なら魔物から多くの
人々は世界樹から教わった“知恵”を使い、それぞれの国同士で協力関係を築いていった。そしていつの時代からか、人々の暮らす世界はたった三つの国に分けられるようになる。
過去の風習を厳しく守り、スティージ王家が支配する王政国家のスティージ王国。
些細な喧嘩、大臣の決定や国のリーダーである皇帝までもが武力によって決められるコルネ帝国。
そして高い技術力を誇り、現在ではその存在が“消えた”マキシム……
「――――さて、ここまでお話をした所で、今日の授業はここまでです!! 分からない事があったら私に聞いてくださいね、お疲れ様でした!! 」
「「「お疲れ様でした」」」
「明日はマキシムの話、そして王国と帝国の関係に関する話ですよ~、楽しみにしてて下さいね!! 」
そうした話しをした所で、今日の授業は終わった。
最後の方で“マキシム”という名前が出てきたが、
父さんから話すなと言われているから質問は出来ないが、何か答えを知るヒントは掴めるかもしれない。
教室の椅子に座ったままそんな事を考えていると、先程までこの教室に居たほとんどの人がどこかへ行ってしまった。
教室に残ったのは僕とロイ、それとキャロル先生の三人だけだった。
「昼、どうしようかな~……」
「朝と同じ所で良いんじゃないか? 流石に手持ちが厳しいから今日は……」
「あの、私も付いていって良いですか? 」
「ん? 良いですよ」
「俺も大丈夫だが……」
「ふふっ、ありがとうございます! こうして仲良くなった子達とご飯を食べるのが夢だったんですが、他の子達は皆足早に行っちゃうので……」
こうして僕とロイにキャロル先生が加わる事となったが、ロイは『本当に良いのか? でも本人が望んでる事だし止めるのは……』とずっとブツブツ喋っていた。
「まぁ……いっか。早く行こうぜ!! 」
「うん」
「あ。私はちょっと片付けがあるので……校門で待ってて下さい! 」
「分かりました」
「そんじゃ先生、後でな!! 」
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