アロサウルスはまだ泣かない

作者 古川 奏

68

24人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

 この古川という作者は本当に軽率に過去作をバンバン削除していくので、こんなレビューを読んでいる暇があったら早く読んだ方が良い。
 全然長い作品じゃないし、文章力の高さからくる読みやすさで、すぐに読了できてしまう。

 ちなみに、レビューについては他の人たちが優れたレビューを既に書いているのであんまり書くことがありませんが、短編としての完成度、表現力、奥行き、読後感、どれを取っても優れた作品だと思います。
 特筆すべき点として、この作品単体に限ったことではありませんが、この作者、ティーンエイジャーの女子とそれを取り巻く空気を書くのが抜群に上手いです。
 正直なところ、書き手として嫉妬を覚えます。

 古川奏、本当に素晴らしい作品なのでこれは消さないでくれ。たのむ。

★★★ Excellent!!!

戦闘で傷付いた恐竜の傷口を洗うバイトをする女子高生。
まずその設定だけでガツンと心を掴まれて、最後まで一気に読んでしまいました!
恐竜と女子高生という一見すると混ざり合わない要素を爽やかに見事に融合させた物語ですが、じわじわと近付いてくる日常崩壊への不安を感じる志帆の心境に「ああ…」となります。
そんな中にあって、「がんばれ。君はまた再生する」という凪の台詞の輝かしいこと!

ちょっぴり切なく、そしてやさしい物語。
是非にご一読を。

★★★ Excellent!!!

戦線から戻された負傷恐竜をケアするのが、彼女たちの仕事。力ある恐竜でさえ挫くものは、いつか私たちの日常も脅かすのだろうか。そんなヒロインの不安を受け止めてくれるのは、いつも彼女の親友なのでした。
***
遠くの戦争と、恐竜と、女子高生。それがこんな絶妙なバランスで一つの作品にまとめられるなんて。息を吹きかけただけでも揺れだすような不安定感はしかし、その舞台で踊るヒロインたちの心情を鮮やかに輝かせるのでした。そのほろ苦さと豊かな甘さ。ほろり、気持ちよく酔ってしまいそうです!ああ楽しかった!

★★★ Excellent!!!

深い。一言で言うと深い短編です。
今日も今日とてアルバイトに勤しむ女子高生2人ですが、仕事内容は傷付いた「恐竜」を洗う仕事。さて、なぜ2人は恐竜を洗うのか……?

ポップで可愛らしいキャラクタに、心地よく軽やかな文体。するすると読めるのは作者さんの腕のなせる技でしょう。
しかし、軽んじることなかれ。テーマは重厚で味わい深く、決して軽いだけの短編ではありません。

表面上の「幸せ」っていうのは、真の「幸せ」なのだろうか。
例え世界が終わってしまおうとも、となりに誰かが居てくれる。それはきっと、本当の幸せなのだと、このお話を読んで思いました。

皆様も是非。オススメです!

★★★ Excellent!!!

 戦争のために、恐竜が上空を飛ぶ。
 その下で、普通の生活が広がる。

 壮大なのに、日常。
 その世界観に、すっと吸い込まれるように読みました。

 主人公は、大人しく慎重で、その友人は明るくおおらか。戦争の行く末に不安になっていく最中、友人の明るさが、不思議と寂しさを際立てているように感じました。

 読み終えて、「今」を生きるしかない私たちは、紛れもなく「今」を生き抜いた過去の積み重ねの上に立っていて、そして、「今」どう生きるかが、未来になることを感じ取り、やはり「今」を精一杯勇気を持って平和を創り出せるよう生きよう……と、そんな事を思いました。

 味わい深い短編です。ぜひ、御一読を。

★★★ Excellent!!!

傷つき血を流す恐竜、傷を洗う女子高生。

繰り返す日常の中で、じりじりと迫りくる悲劇的な結末。
ほのぼのした女子高生二人のやりとりの後ろに迫る無慈悲な現実。

幸せな今が決して続くわけではないことが読後の不思議な気持ちを呼び起こします。この上なく瑞々しく、切ない物語。

★★★ Excellent!!!

「いまある幸せが、偽りの上に成り立っているのかもしれない」ということを見ないふりができない、センシブルな心の持ち主の主人公。
「そうだったとしても、いま幸せなのだから楽しもう」とおおらかに包み込む相棒の少女。
どちらも自分の気持ちに正直で、どちらも自分なりに「いま」を捉えています。

もし主人公が逆だったら、どんなお話になるだろう? と思いました。
楽天的な彼女は、本当に、ポジティブなキャラクターの持ち主なのかな?
それとも、主人公と同じ気持ちを感じながら、それでも前向きに生きてるのかな?
もしかしたら、全部諦めて「いま」だけ考えることにしたのかな?

読後にこんなに考えさせられる短編は、なかなかないと思います。
素敵なお話でした。

★★★ Excellent!!!

アルバイトをする二人の女子高校生のお話です。穏やかで平和な時間が過ぎて、疲れた二人はドーナツを食べに行きます。

しかし二人のバイト、恐竜を洗う仕事。なぜ恐竜を洗うのかから始まる疑問は、徐々に明らかになっていきます。最初は楽だった二人のバイトがだんだんしんどくなってきた理由も。

答えはすぐに収束します。
「この平和な日常は長くは続かない」
それが分かっていて、それでも平和な時間を幸せに過ごそうと一生懸命な二人。

どうか二人の推測が杞憂でありますように。
どうか二人の不安がいつまでも思い過ごしでありますように。

★★★ Excellent!!!

漠然と不安を抱えた事があります。

作品に書かれているものと、僕の個人的体験とではスケールがだいぶ違ってはいますけれど。

日常を謳歌する高校生二人は、手当ての一環として傷ついた恐竜の体を洗います。

自分たちが謳歌している今の幸せが徐々に浸食されつつあって、いざ外側がやってきたらどうなってしまうのかを不安に思いながら、今を抱える女子高生の、今。

★★★ Excellent!!!

今を生きるために、別の誰かががんばってくれている。
だから私たちは限りある今を大切に生きなければならないし、そうすることが幸せであると信じなければ、誰ひとり報われない。

誰かのためにひたむきにがんばることの健気さであったり、そうした誰かのがんばりに触れることで気づく小さな幸せであったり。
この物語の中に散りばめられた『生きる』ことの強さや儚さは、作者さまからのメッセージであり、誰もが思うところのあるものだろうと私は感じました。

家族や友達と何気なく笑い合える。そんな小さな幸せの積み重ねが、本当の幸せなのかもしれません。

★★★ Excellent!!!

闘いは優勢と知らされていながら、恐竜の受けた傷が深くなっていっていることに否が応でも不安を感じるあたりが、太平洋戦争のときにも確かにあったプロパガンダを思い起こさせます。それでも、ただ日常を過ごすことしか出来ない若者たち。
今日を精一杯生きる。それが、闘いから傷ついて戻り、また闘いへと向かう恐竜へのせめてもの謝意のようにも、あるいは密かなリスペクトのようにも思え、その健気さにちょっとホロリとします。
いつもながら、作者様の爽やかな文章がSFのスタイリッシュさをも引き立てて、読後はやはり安定の清涼感に包まれます。