第57話 バザール帰宅後

 

 バザールから帰宅したスプリングとアストレイア。家の前でおんぶしていたアストレイアを降ろし、手を引かれながらリビングに到着する。そして、いつものソファに押し倒される。


「レイアさん? 今日は積極的ですね」


 ソファに倒れ込み、アストレイアが覆いかぶさってくる。


「先輩が悪いです! コスプレ撮影会は後回しです。今は私をたっぷりと甘やかして可愛がるのです!」


「まずは何をご所望ですか?」


「頭を撫でてください!」


 いつもより甘えてくるアストレイアの頭を撫でる。邪魔になったメガネをテーブルに放り投げ、顔をこすりつけてくる。頭を撫でると、ふにゃぁ~、と猫のような可愛らしい声を上げる。


「猫みたいだな」


「そういえば、いいものがありました!」


 何やら画面を操作するとアストレイアの頭に猫耳が生える。


「なっ!?」


「じゃーん! 猫耳カチューシャです! にゃん♡」


「レイア最高! 写真撮っていい?」


「少しだけですよ。早く撮って私を可愛がってください」


 許可をもらったスプリングは胸に寝転んでいるアストレイアの写真を撮る。甘えた表情で写る猫耳をつけたアストレイアはウィンクしたり、手で猫のポーズをしたり、サービスをする。


「はぁ・・・宝物にします」


「これくらいならいつでもしますよ。それよりもほらほら! 私を甘やかすのだ!」


 アストレイアのおねだりの通り、ぎゅっと抱きしめたり、頭を撫でる。スプリングはふと思いついたことを実践する。


「きゃっ!」


「すまん!」


 顎の下を撫でてみたのだが、アストレイアから驚きの悲鳴が上がった。


「い、いえ大丈夫です。驚いただけなので。くすぐったかったです」


「ほうほう。レイアの新たな弱点を見つけた」


「ほどほどにしてくださいよ」


「了解」


 今日のところは顎の下を撫でるのは止め、大人しく頭を撫で続ける。


「そういえば、猫って背中や尻尾のあたりを撫でられるのも好きみたいですよ」


「ここのあたりか?」


 要求された通りにアストレイアの背中を撫でる。少し欲が出て、お尻のギリギリの腰まで触るが彼女が嫌がるそぶりは見せない。


「おぉ・・・先輩がナチュラルに私の背中や腰を撫でてきます。先輩のえっち!」


「レイアが要求してきただろ」


「猫の話だったんですが」


「じゃあ止めるか?」


「止めちゃダメですよ。そのまま続けてください」


「はいはい」


 スプリングは、それからしばらくアストレイアの時々命令される要求通りに彼女を甘やかして可愛がるのだった。

 三十分ほどした頃だろうか、アストレイアが起き上がった。


「ふぅ。先輩成分を少し補給できました。落ち着きましたね」


「これで少しなのか?」


「少しですよ。先輩成分の消費は戦車並みですから」


「燃費悪いな」


「補給に時間がかかって、あっという間に消費しますからね」


「枯渇したらどうなるんだ?」


「どうなるんでしょう? 先輩のお家に突撃しちゃうかもしれません」


「そうか。まぁ、枯渇しかけたら遠慮なく言ってくれ。現実リアルでもゲームここでも甘やかして可愛がるから」


「わかりました! 遠慮なく言います。では、今からお願いします。先輩起きて!」


 アストレイアに促されるままソファに起き上がり、隣に座ったアストレイアに押し倒される。スプリングの頭が柔らかい太ももの上に落ちる。


「膝枕してみました!」


「気持ちいいな」


「でしょでしょ! さっき放り投げたメガネもかけますか」


 テーブルにあったメガネを取る際、アストレイアの胸がスプリングの顔を覆いつくす。温かく柔らかな感触が気持ちいい。


「どうですか?」


「猫耳メガネも似合うな」


「ありがとうございます。ですが、そっちの感想ではありませんよ。私のおっぱいの感触はどうでしたか?」


「なぁっ!」


「ふふふ。わざと当てたので。顔を赤くして、何もなかったですよ、みたいな顔をしている先輩は可愛かったです」


「・・・」


 スプリングは何も答えず横を向く。


「あれ? そっち向きでいいんですか? 私のほうを向いて顔をおなかにうずめたり、うつ伏せになって太ももに顔をうずめたりしないんですか?」


「そういうハードなことを要求しないでくれ。そんな情報どこから仕入れるんだ」


「もちろん、夏稀ちゃんと雪ちゃんです。クラスの他の女の子たちともよく話してますよ」


「あんまり鵜呑みにしないように!」


「了解です」


 スプリングは向きを変え、上向きに寝る。アストレイアの胸と顔が良く見える。母性溢れた優しい笑みを浮かべてアストレイアが頭を撫でてくる。


「先輩の髪の毛ちょっと固いですね。女の子の髪とは違います。撫でるほうも癒されますね。癖になりそうです」


 細い指先でクルクルと髪の毛を巻き付けて遊んでいる。時々、わしゃわしゃ~!、と言いながら髪をかき乱してくる。十分ほど遊んでいたアストレイアが突然手を止める。


「ふぅー」


「どうした?」


「飽きました。そして、重いです!」


「・・・素直だな」


 十分に膝枕を堪能したスプリングはゆっくりと起き上がる。


「先輩の前で取り繕っても意味ないですから」


「そうだな。じゃあ、いつも通り俺が膝枕する」


「わーい!」


 嬉々として倒れ込んでくる。じゃれつくように顔をこすりつけ、いいポジションが見つかったアストレイアは目を閉じてスプリングに頭を撫でまわされる。


「私、やっぱりされるほうが好みです」


「奇遇だな。俺はするほうが好みだ」


「これからも沢山してください。でも、私もたまにしてあげますね。約束したので、今度現実でもしますね」


「よろしく」


「お触りは自由ですので存分に楽しんでくださいね」


「あんなところやこんなところも、か?」


「あんなところやこんなところも、です」


「本当にいいのか?」


「私は先輩に全身触られたいですよ。幸せな気分になります。・・・恥ずかしいですが」


「・・・そうか。勇気が出たらな」


「はい。いつでもお待ちしています」


 スプリングは膝枕しているアストレイアを撫でる。アストレイア気持ちよさそうに撫でられ甘える。

 二人の甘くて幸せな時間がゆっくりと過ぎていった。

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