緋色の王様は赤りんごがお好き

三上 エル

王様は赤りんご以外認めない

「なにこれ?」


 王様は目の前にどんと積まれた緑色のりんごの山を見て、不機嫌そうに問いかけた。


「りんごですが何か」

「何かじゃないよ! これがりんご? 全然赤くないじゃない! なんで熟れてないのを持ってきたのさ?」

「いや、これは青りんごなので青くても既に熟れた状態です」


 感情を押し殺して冷静に答えるニックに、王様は懐疑的な視線を向ける。


「嘘だ。ニックは僕が嫌いだから、嘘ついてまずいりんごを食べさせようとしてるんだね!?」

「ニック、うそついたの?」

「ニック、わるいこー」

「だめなんだー!」


 王様に同調して、周りの子供たちも非難の声を上げた。全くもって事実無根の言いがかりをつけられたニックは額に手を当ててため息をつくと、見事な手際で青りんごの皮をむいて切り分ける。そして何も言わずに王様の口に無理やり突っ込んだ。


「もがが!?」

「生まれて初めて青りんごを食べた感想をどうぞ」


 怖いくらい爽やかに笑って、ニックは王様に問いかける。もがもが言いながら口一杯の青林檎を食べ終えた王様は、悔しそうにニックを睨みつけながら、今にも消えそうなほど小さい声で答えた。


「おいしい……けど……」

「おいしいの?」

「おいしいんだって!」

「わたしもたべたい!」

「ぼくも!」

「ニック、ちょうだい!」

「ちょーだい!」

「はいはい、いっぱいあるから順番においで」


 あっという間に子供達が押し寄せて、テーブルの上にあったりんごの山は跡形もなくなっていた。


「あおりんごおいしかったー!」

「でもあれあおじゃないよ? みどり?」

「みどりんごだー!」

「ニック、またみどりんご買ってきてー!」


 キラキラした瞳で青りんごをねだる子供達を見て、ニックは王様に向かって得意げに笑う。


「だそうですが、青りんごはお気に召しませんでしたか?」


 そんなニックに、王様はぷるぷる震えながら頰を膨らませた。


「僕は赤以外認めないからっ!」


 結局その日は一日中王様が拗ねてしまって、なだめるのが大変だった。仕方がなく子供達みんなで赤いりんごの絵を描いて王様に見せて、ようやく機嫌が直ったけれど。


「しばらく青りんごはやめとこう……」


 ヘトヘトになったニックは心底そう思ったのだった。

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