―第十話―
二十七
―午前0時30分頃―
―異界―
そのベルフェゴールの粒子は霧散し、自分達をも覆った。
その余りの量に、結界内とはいえ、思わず眼を
そして、眼を見開いた瞬間、そこは、広大で真っ白な空間だった。
目前には黒い男が対峙している。
黒い男「…孤独を埋めたくてユウイチを?」
そう言われ、納得してしまった。
雄一「そう…俺は孤独だった…」
黒い男「孤独を共有したかった?」
雄一「そう…ずっと俺は独り…でも…俺は…ただ」
黒い男「…ただ?」
雄一「迎え入れたかっただけなのに…! ベルフェゴールはイスラエルの民達を…!」
それは、自然と出た言葉だった。
ベルフェゴールの心中。
共有された言葉。
そう、受け入れたかっただけなのだ。
黒い男「…ペオルの事件か」
そうだ…けれど…
雄一「けど…! それは…それこそ価値の違い…! 彼の持て成しは、彼等にとってタブーだった!」
黒い男「…」
雄一「持て成しが合わなかったのは悪く思ってるんだ…!
けど…!けど…!あんな事をするのはあんまりだ…!」
その辛さが伝わってくる…悔しくて仕方ない。
黒い男「ヤハウェの怒りか…」
雄一「モアブの民達に疫病を
黒い男「…豊穣の神であるお前にとっての生産の
愚かしいとは思うがな」
雄一「…けど、彼はそれで悟ったんだ… 結局は、
だから彼は何百年も探求した…! そして、
"女は裏切る"という事を…ッ」
最期の一言は、重く、
その時の事を思い出す。
彼女が自分を置いて出て行った時の事を…
黒い男「ベルフェゴールの探求…」
雄一「結局…女は…その程度なんだって…」
とても哀しい結論だった…これからもそうなのか…そう思わせる、何かが在った。
黒い男「…お前が一番辛いのは"裏切り"か…」
雄一「女は裏切る… あの預言者… モーゼの様に裏切るんだ… 奴らは怠惰だ…
考えるのを拒否し、"神"と呼ばれる絶対の存在に従うだけ…
そいつ
とても哀しい現実…それを発して気付いた絶望の言葉。
黒い男「…だから雄一の彼女に
雄一「そう…あの女は
黒い男「甘言を囁いて言い訳じゃない」
その冷ややかさが、自身の心に刺さる。
黒い男「ユウイチの彼女がどーかなんて知りはしない だが、甘言を囁いて介入した時点で、お前もイスラエルの神と変わりはしないだろう」
雄一「…ッ!」
そうだ…何も変わらない。結局一緒なのだ。自分も。
黒い男「神のクセに…長い事生きてきてLV1か? 煽り耐性が無しか
裏切られてツライとか…ガキか
そんだけ長く生きて言い訳すんな
…生きてるは…ビミョーか 悪魔だし…
ま、理不尽だろうが裏切られて辛いから止めるじゃなく、
裏切られても裏切らず、より良い答えを出せ!
聴いてるだけで胸がムカつく…人間は皆そうして生きている…!
…勿論人間全てがそうとは言わんが
だが、神なら、上に立つ神らしく、民に模範と為る正しさを視せてみろ」
そう言われ、雄一は、あっけらかんとした顔をてしまった。
言われると思っていなかったのか、言葉が出てこなかった。
それはそうだ。
同意して欲しいのだ。
辛い事を共有して欲しいのだ。
結局自分は、自分の辛い事をでやらなきゃ為らない事をしていないで、怠惰でいただけなのだ。
それが自分の怠惰なのだ。
やらない理由にはならない。
より良い答えを出す為に。
頑張ろう。
努力をしよう。
少しづつでも。
たった独りでも。
諦めなければ。
探求し続ければ。
さようなら
ベルフェゴール
アナタは理解者が欲しかったんだな…
俺は、独りでも行くよ
そう、思うと同時に、粒子が通り抜け、元いた光球に戻った。
最後の瞬間、遠く離れた、自分を視た。
ソレが何だったかは解らない。
だが、最期に口元が動いていた。
なんと言っているか聞こえなかった。
だが、何を言っているかは解った。
その顔は、とても寂しそうだった。
そして
―2016年1月1日 午前0時42分―
―目黒不動内 弁天池―
周囲は、新年を祝う賑わいで溢れていた。
自分は、戻ってきたのだ。
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