承 編

―第一話―



―2015年12月31日(木) 夕方―


―都内某所―


薄暗い部屋で、二人は機材―退魔具たいまぐ―をいじっていた。


青い男「…そんなに用意必要なんですか?」


流石さすがに不安になり、問い掛ける。

黒い男はカチャカチャと無言で銃を弄っていた。


青い男「!…そんなモンまで使います?!」


驚きが声の大きさになって出てしまう。

当然だ。銃刀法が在る日本で銃や刀など―閻魔は持たなくても呼び出せるが―持とうものなら、目立つし、バレれば即捕まる。

そんな危ないモノを出すと言う事は余程よほどの事なのだろうか…

そう、思惑を巡らす。

だが、そんな思いも一蹴される。


黒い男「一丁しか持って行かないさ」


青い男「あー…」


持って行くのか… 言っても止めないか。

そういう、持って行く決意がその雰囲気から受け取れた。

青い男は溜息を吐きながら、それには文句を言わず、どうアシストするかに意識をシフトした。

それを気にせず、黒い男はカチャカチャと金と銀のナックルを取り出した。


黒い男「ホレ」


と言い、青い男にその二つを投げた。


青い男「え?!わッ…!」


もたつきながら来ると思っていなかった"それ"を受け取った。


黒い男「お前がそれを持て」


その言い方から"使え"という意味なのは直ぐ解った。


青い男「オレが…?」


多少の驚きはあったが、すぐ受け入れる。

自分がその立場なのだと理解した。

渡されたそれは、ナックル部分にラテン語が刻まれたナックルダスターだった。

メリケンサックの様な物であり、両手にはめ、物理的に殴りつける事によって、悪魔に対して大きな効果を発揮する。


青い男「でも…こんなモノが必要ななんスか?」


黒い男「まあな…」


煮え切らない返答を、作業をしながらする。

黒い男は、自身の銃のバレルを交換し、携帯しやすくしていた。

ベレッタ90―TWOナインティーツーを原型としたそれは、バレルを短くしても、普通のものより大きかった。

フレームに銀が用いられており、"陽"、とスライドに刻印されている。

バレルは容易に交換可能になっており、メンテナンス性とカスタマイズ性が高く作られていた。


青い男「最近あんまり使ってなかったですよねー…やっぱそれほどの相手なンスか…?」


黒い男「それ"ほど"でも無いさ ただ―…」


そう言って、弾を込めた銃のスライドを引き、チャンバーに銀の弾丸を装填した。


黒い男「面倒なだけさ」


そう言ってはいるが、その状態を視て確信する。

―装填した状態で銃を携帯する事自体最近じゃ珍しいのにしている―

その状態を見て解った。

―苦戦ではない―

そう、

―面倒な相手だ―

と。



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