第26話 ティータイム みずほと健一 裏話
この話は、健一がシオンを辞めた直後の話である。
みずほと健一は、別の喫茶店にいた。
健一はシオンで騒動を起こしてから、あの喫茶店には行けなくなった。
そこでみずほが、わざわざ自分の休みの日に池袋のとある喫茶店で会ってくれたのだ。
みずほと健一は暫く黙っていた。
やがて、みずほが、口を開いた。
「で・・・?私を呼び出したのは何か用事?」
「灯と別れました。」
「そうなの。」
みずほは、別に驚く様子もなく煙草に火を付けた。
健一は、驚いた。
「みずほ姐さん。驚くと思ったのに・・・。」
「別に驚かないわよ。灯と同僚関係が切れた時点で、たぶんこうなるとはおもっていたから。」
「そうですか・・・。やっぱり、みずほ姐さんは読みが深いですね。」
健一も煙草を吸いながら話す。
「で、灯のことはちゃんと引導を渡したのね。」
「はい。渡しました。」
「そっか、灯。今頃泣いているな。あんたはそれでいいのね。もう、ちょっかい出さないわね。」
「ええ。もう、腹決めました。」
健一はきっぱり言った。
「でも、灯が連絡してきたらどうするの?あの子の事だからやりかねないよ。」
「大丈夫です、電話番号も変えました。あとで、みずほ姐さんには教えますが、灯には言わないでください。」
「わたし、教えてもらっても掛けないよ。」
みずほが言う。
「俺から掛けます。何時ごろならみずほ姐さんいますか?」
「大体、PM11:45分位に仕事終わるから、帰るのはAM1:00かな。」
「何時くらいから仕事してらっしゃるんですか?」
「AM8:45」
みずほがコーヒーを飲む。
「凄い、仕事してるんですねー。」
健一が、感心したように言う。
「俺は、これから、職探しです。」
健一が笑う。
みずほは、今日の健一が何かが吹っ切れたように明るい顔をしていることに、少し安心した。そして言った。
「なんで、私にこれだけ相談してくるの?相手間違えてない?」
健一が話す。
「中庸だからですよ。だから話しやすいんです。」
そう言いながら、彼はみずほに新しい電話番号のメモを渡した。
「それじゃあ、これで。これから面接なんです。」
そういって、彼は伝票をテーブルからとると、席を離れた。
後に残されたのは、健一の新しい電話番号が書いてあるメモ。
みずほは、はあ・・・とため息をついた。
「また、私聞き役かよ。」
そう言いながらも、彼女はメモを鞄にしまった。
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