第153鱗目:控え室!龍娘!
よし、ちょうど人居ない!
「降りるよ!」
「う、うん!」
バサリと大きく翼を広げ、僕は人の大勢いる料理大会の会場横にある選手受付のテント傍へと、さーちゃんをお姫様抱っこしたまま屋上から飛び降りる。
「いーよっと!」
「し、死ぬかと思った……」
「あはは、さーちゃんごめん」
幾ら時間が無いとはいえ、お姫様抱っこしたままさながら忍者みたいに屋上をぴょんぴょん移動するのは心臓に悪かっただろうなぁ……本当に申し訳ない。
「時間に間に合ったんだから気にしないで、それよりも……」
ん?
「そっちを早く何とかしましょ」
「わぁぁあぁ!ごめんなさいごめんなさい!驚かせちゃってごめんなさいっ!」
髪を整え始めたさーちゃんの指さした方を見た僕は、驚きのあまりでか物凄い形相と物凄い格好で固まってしまった受付の生徒さんを見て必死に謝るのだった。
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「んーしょっ…………と。でも本当にありがとうね鈴、少し、いや結構怖かったけどショートカットしてくれなかったら間違いなく遅れてたわ」
「いいよいいよ、僕も気がついてなかったんだし。なんにせよ間に合ってよかったよ」
あの後気を取り直した受付の生徒さんに連れられ、僕とさーちゃんは選手用の控え室横の更衣室へと通されていた。
「でもまぁ、まさかクラスの代表が僕達とはねぇ」
「少なくともアタシが出る事になったのは鈴が原因なんだけどね」
「む、僕だって好きで出るわけじゃないんだよ。出来れば慎ましやかに騒がれること無く静かに暮らしたいって思ってるんだから」
だからそんな「何を言ってるのこの子は?」みたいな目で僕を見るでないさーちゃん。まぁそれはそれとして……
「このエプロンはもうちょっとどうにかならなかったのかなぁ……すっごいひらひらでピンクでふりふりで…………ピンク……」
エプロンをみにつけ座った目でこちらを見てくるさーちゃんに僕は内心そう言いながら、手元にあるさーちゃんの身に付けている物と同じエプロンを見てそうボヤく。
「そのエプロンのテーマは新婚さんらしいわよ。提供は被服部ですって」
「わぁい、メイド服と合わさってふりふりにばーい、かーわーいーいー」
「台詞の中身と違って声が死んでるわよ」
「頼むから死なせてくれ」
そんな会話をしつつメイド服の上からそのエプロンを僕が身につけた所で、バンっ!と勢いよくドアが開けられ、僕達はそちらを振り向く。
「遅れてきた選手が誰かと思えばやはり貴女でしたのね!」
「あ、コスプレの人」
「コスプレじゃありませんわ!髪の毛とかは元からですの!も・と・か・ら!」
そういやそうだった。
「ごめんごめん」
僕らと同じエプロンをつけ更衣室へと入ってきた以前会った金髪さんに、軽く謝って居た僕は、ふとそこで以前聞き逃した事を思い出す。
「全く貴女達ときたらこんな大事な催しを忘れて……それに比べてこのワタクシ!受付開始30分前に来てましてよ!そしてこの試合でワタクシは優勝して貴女より優れていると証明しますわ!」
そんなに早く来てじっと待つくらいならその間に他のお店回ればいいのに……じゃなくて。
「そういや前聞きそびれてたけど、君の名前は?」
「あら、そんな事もしりませんの?これだから他人に興味が無い人は…………いいこと?ワタクシの名は──────────」
「あー!こんな所にいた!もうそろそろ時間なのにうろうろしてちゃダメでしょ!3組の2人とも迷惑かけてごめんね、料理大会頑張ろ!」
「ちょっ!まだっ!」
バタン
「……えーっと鈴?あの人は?」
「……コスプレさん?」
「…………料理大会頑張りましょ」
「…………だね」
同じクラスの出場者の子に金髪さんが連れていかれた後、虚しく音を立てて締まったドアを見ながら僕達は微妙な雰囲気の中そう話すのだった。
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