第141鱗目:ともだち、龍娘

「…………」


「「「………………」」」


「…………あー鈴香?その辺で辞めてやったらどうだ?というか俺としては早く検査を受けて───────」


「三浦先生は黙っててください」


「あ、はい」


「……さて、3人共。何か僕に言うことはあるかな?」


「「「すいませんでしたっ!」」」


「でも引きこもってた鈴ちゃんも悪いと思います!」


「そうよそうよ!それに私はちょっと道具を貸してあげただけだし!理不尽よ!」


「すずやんが心配だったんやもん!」


「だからといって人の部屋の壁を爆破するアホがいるかー!」


「あでっ!」「あだっ!」「あぢっ!」


 目の前で地面に正座をしている3人の頭を叩いて僕はグワッと翼を大きく広げながらそう怒鳴り、黒く焼け焦げて穴の空いた僕の部屋を指さす。


「どーしてくれるのさ僕の部屋っ!」


 どうしてそんな事になっているのか、それは数分前に遡る─────────


 ーーーーーーーーーーー


 あの事件から約1週間が経ち部屋に籠ったまま過ごしていた僕は──────────


 やっぱり僕自身自分が人じゃないって理解してたし、あの一件でもう完全に諦めはついたけどさ、それでもあんな事したんだし社会的に終わっただろうなぁ……


「はぁー……」


 それに多分とらちゃんにも怖がられたよなぁ……あんなに震えてたんだもん、もう仲良く出来ないよねぇ…………せっかく友達になれたのになぁ………あ、やばいまた涙が。


 割と自分自身の事に関しての悩みはもう解決していた。

 しかしそれでもここ数日のように部屋の隅でにゃんこうのぬいぐるみに抱きつき、壁や天井が水晶で覆われた部屋の隅で僕は小さくなっていた。


「……………………数ヶ月前は毎日1人だったのに、今1人でいるのがとっても寂しいなぁ……」


 きゅうと緩みかけた涙腺を締めるようにして、僕がにゃんこうのぬいぐるみにもっと強く抱きついてると、ふと外がなんだか騒がしい事に気がつく。


「なんだろう?」


 隆継がなんかトンチンカンな事始めた?天岩戸みたいな事始めたのかなぁ……


「ま、関係ないか、僕はこのままここで丸くなって───────」


 そう言って僕がまた丸くなろうとしたその時、僕の言葉は轟音により遮られ、土煙が晴れる頃には僕の部屋はお外へと繋がる立派な風穴が空いていた。


 あ……天岩戸が土手っ腹から爆破されたぁ!?


 そんなあまりにも非常識な出来事に僕がポカーンとなっていると、その風穴にすっと影が映り──────


「すずやんのアホー!」


「ぶべっ!?」


 僕はとらちゃんから強烈なビンタを貰ったのだった。


 ーーーーーーーーーーー


「でもまぁ、嫌われてなかったでしょ?」


「ぐぬぬぬぬ……確かにそうだけどさぁ…………!」


「それにさっきも言ったみたいに、やっぱり何も言わないで引きこもってた姫が悪いんじゃないかしらー?」


 確かにそれは僕が悪かったけどさ!それでももっと他に方法あったでしょ!なんでわざわざ壁を爆破するのさ!

 というか爆破した張本人の金城さんには言われたくない!


「まぁまぁ、部屋の壁は直せばいいんだし、鈴ちゃんも無事復活したからいいじゃない!」


「全然!全然良くないからねちー姉!?」


 澄んだ秋晴れの空の元、久しぶりに部屋から出た、というより出ざるをえなかった僕は安心したように笑顔で笑う皆の前でそう叫ぶのだった。

 こうして僕は色々と認識は改まったが、僕は僕としてもう一度1歩を踏み出した。

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