第113鱗目:洗濯物!龍娘!
「ねぇ鈴」
「なぁにさーちゃん」
暑さも少し和らいできた日の夕暮れ時、テレビの料理番組が流れているリビングでコトコトと料理をするちー姉を後ろに、僕とさーちゃんは手早く洗濯物を畳んでいた。
皆で住み出してから洗濯物の量が増えたからかなぁ、1人で暮らしてた頃よりも格段に洗濯物を畳む速度が上がった気がする…………んで。
「気づいた頃にはこういうのを自分のじゃなくても触る所か畳むのに、躊躇も抵抗も全くなくなったのは………慣れなんだろうなぁ……」
こうなったばっかりの頃は尻尾とか翼で、性別がどうこうなんて気にしてるどころじゃなかったからなぁ…………余裕が出て来て気にする頃にはもうちー姉ので慣れてたし、慣れって怖いなぁ。
「なぁに鈴、毎日あれだけ畳んどいて今になって気になりだしたの?」
「ち、違うよ!?いやーね、そのー…………慣れって怖いなぁって……本当に………」
洗濯物の山から女物の下着を手に取って固まっていた僕が遠い目でそんな事を思っていると、ニヤニヤとした顔のさーちゃんにそんな事を言われ、僕はどこか諦めたようにそう答える。
「…?まぁいいわ、それより鈴」
「はいはい?」
さーちゃんの言いかけてた事はなんだろな〜っと。
「もしかして鈴ってブラしてない?」
「ぶふっ!ちょっ!さーちゃんいきなり何を!?」
「いやね、引越して来て1ヶ月、アタシ達当番制で洗濯物畳んでるじゃない?」
「う、うん」
あーびっくりした……いきなりそんな事言われて本当にびっくりした………
「それで鈴のキャミソールは毎日見るけど、鈴のブラって1回も見た事ないなぁって」
「そりゃあないよ!だって付けてないもん!」
平然と下着の話題を話すさーちゃんに僕は顔を赤くしながらそう言うと、さーちゃんは驚いたようなギョッとした顔で僕の方を見てくる。
「鈴、それって本当なの?」
「え、何が?」
「付けてないって話、本当?」
あ、あぁ…………ブラの事か………
「う、うん……だって付けるくらいの大きさも無いし、別に付けなくても不便はないし……むぅあっ!?な、何!?」
ほっぺたムギュってされた!というか顔近い!
「ダメよ鈴、確かに鈴のは服の上からじゃ分からないくらい小さいけど」
「ちいっ!」
「それでもしとかないと将来形が崩れちゃったり、擦れて痛くなっちゃったりするのよ。…………鈴?どうかした?」
さーちゃんに小さいと言われ思わずピキッと顔を引き攣らせた僕は、ぶすっと頬を膨らませ説明し終わったさーちゃんからぷいっと顔を背ける。
「べつにー?僕の大平原はそんな形が崩れたり擦れる程の大きさも膨らみもないから、そんなもの要らないなぁーって思っただけー」
というか持ってはいるんだけど、それ以前にそれだけはつけるのに抵抗があると言いますか、男としての最後の一線と言いますか……
「大平原って……ふてくされてそんな冗談をいう子にはー……こうよっ!」
「………………えっ?」
きっと冗談のつもりだったのだろう、さーちゃんはそう言って服の上から僕の胸に手を当ててくるが、そこには僅かな膨らみすらなく、ぷにぷにとした柔らか肌の膨らみのないな胸板があるだけだった。
そしてここまで何も無いのは想定してなかったのか、無言になったさーちゃんと僕の間にとてつもなく微妙な雰囲気が流れる。
「…………鈴…」
「……なに…………」
「…………ごめん……」
「…うん……」
「多分まだチャンスはあるから……」
「うん……ってそんなチャンス欲しくないっ!」
全く欲しくないと言えば嘘になるけども!
「えー?でも鈴も元は男の子なんだし、ちょっと揉めるくらいは欲しいんじゃないの?ほらほら」
「ちょっ!さーちゃんやめっ!押し付けないで揉まないで!」
「あらあら♪2人は仲良しね〜♪」
「ちー姉そんなんじゃっ!ひゃんっ!」
「あ、鈴ちゃんおへそ弱いのね」
そして僕達はさっきの雰囲気はどこへやら、微笑ましげにこちらを見るちー姉の前で互いに力尽きるまで、キャイキャイとじゃれ合ったのだった。
その後部屋に戻った僕は誰にも知られることなく、ちょっとの間だけひっそりしゅんとなったのは秘密である。
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