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 ルシウスが監視しながらキャロルに閨講師を付け逃げ出さない様にとっ捕まえるという飽くなき執念の結果、子宝に漸く恵まれる事は出来た。


 ルシウスの執念と努力と忍耐の賜物である。


 産まれたのはルシウスが女の子だったらこうなると思える程ルシウスによく似た天使の様な子供だった。


 だがしかし、問題は中身がキャロルそっくりだった事である。


 天使の皮を被った魔王ならぬ、天使の皮を被ったサイコパスというとんでもない少女が誕生してしまったのだ。


 ルシウスの皮を被ったキャロル爆誕である。


 シェリルに会った巫女が


「すごいわね。

 魔王とサイコパスの両方を兼ね備えるなんて。

 むしろ誇るべきだわ。

 最凶のハイブリットよ。」


 とよく分からない賞賛をシェリルに送った程だ。


 そんなシェリルは黙って項垂れたルシウスにキョトンと首を傾げている。


 見た目は天使そのもののシェリルはそんな姿も絵になるほど愛くるしい。


 だが中身はキャロルである。


 勘違いしてはならない。


「まあそんなに落ち込まないで下さい父様。

 改良して明日には再チャレンジしてみますね。」


「…ダメに決まってるでしょ。

 ほんとダメだからね。」


「大丈夫ですよ父様。

 父様の命綱も既に用意してありますから。

 自宅にいながら遊園地気分ですよ。」


「何で発想までそっくりなのほんと…。」


 ルシウスは顔を掌で覆った。


「…シェリル。

 昨日私が言った事覚えているかい?」


「昨日父様に私会いましたっけ?」


「…会ったよ。

 シェリルがシャルルにクッキー取られたって言って焼き殺そうとした時に会ったでしょ。」


「あー確かそんな事もありましたね。」


「…私言ったよね?

 ちゃんと考えてから行動しなさいって。」


「でもこの前母様が『人生において必要なコマンドはがんがん行こうぜだけ』って教えてくれましたよ。

 非常に勉強になりました。」


「…あの馬鹿っ!」


「あとついでに『容赦なく殺っていいのは陛下だけ』って言ってました。

 さすが母様だと思いました。」


 ルシウスは額に青筋を浮べ息を深く吸い込んだ。




「ーっキャロル!!!!!!」


 ルシウスの怒号がマリアヌ国王宮に木霊した瞬間である。

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