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「……これはまた派手にやらかしてくれたもんだ。」


 入口を見ると吹き飛んだ扉や部屋の惨状に呆れた顔をした国王と宰相が立っていた。


 宰相の額には青筋が出来ている。


「レオン!

 お前は数刻位大人しく出来んのか!!」


「えっ俺?!!」


 レオンが青ざめながらキャロルを見るがキャロルはふっと視線を逸らした。


 恨めしげにレオンの口が裏切り者と小さく動く。


「一緒にいたら全員連帯責任だ馬鹿者!!!!

 そこの2人もだ!!!!」


「すいません。」


「ごめん…。」


「申し訳ございません。」


 3人が謝ると宰相はブツブツと羊皮紙にペンを走らせ始めた。


 修繕箇所を調べているらしい。


 何だか居た堪れない。


 計算の鬼と化してしまった宰相を横目で見た後国王が咳払いしながらキャロルを見る。


「まあ昨晩キャロル嬢に話を聞いた時にこうなると予想して放置した儂にも責任がある。」


 バレていたのかと国王に視線を向ける。


 国王は肩を竦めた。


「キャロル嬢が衣装部屋から出てきた上に禁書棚からその本が消えておるのだ。

 簡単に予測はつく。」


「…なるほど。」


 最初からバレていたらしい。


 中々食えないタヌキ親父だ。


 ルシウスとの血の繋がりを再認識させられる。


「まずはキャロル嬢の処分については魔術師会からの1年間の停職及び減給処分。

 また停職期間中の魔封じの装着で話がついた。

 異論はあるか?」


 キャロルは目を見開く。


 あまりにも処分が軽い。


 軽すぎるのだ。


「キャロル嬢の禁術の使用について厳しく処分するとなるとルシウスや巫女も処分せねばならなくなるのでな。

 この処分に決まったのだよ。」


 国王が片目を瞑る。


 だがキャロルは暫く俯いた後ゆっくりと首を横に振った。


「…その処分をお受けする事は出来ません。」


 キャロルの返事にレオンが目を丸くしている。


 こんな処分とも言えない処分を何故拒否するのかと言いたいのだろう。


「…それは何故だ?」


 キャロルはゆっくりと顔を上げ国王の目を見て口を開いた。


「…私には魔力がありません。

 ですので魔術師会に所属する事も魔封じも使用出来ません。」


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