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 窓の外には東屋に座る黒髪をゆるく括った女性と女性に駆け寄る同じ黒髪の幼女の姿があった。


 女性は背を向けていて顔は見えないがあの幼女は恐らくキャロルだろう。


「かーたまー。」


 幼いキャロルがてとてとと覚束無い足取りで母親に向かって行っている。


「ん?

 なんですか?」


 女性の声が聞こえた。


 どことなくキャロルの声に似ているがもう少し高い優しげな声。


 胸がぎゅっと苦しくなる。


「マーシャがナイジェルおばしゃまが来るからかーたまを連れて来なさいって言ってましたー。」


「げっ。

 キャロル、餌にされてはいけないと昨日教えたばかりですよ。

 マーサは悪の権化です。

 利用されてはなりません。」


「あくのごんげ?」


「そう。

 とにかく悪い人って事です。

 何かとお母様を悪人の元へ連れて行きたがるのです。」


「でもマーシャは『おかーさまは成人した貴族としての自覚に欠けているから躾直さねばならないのです。』って言ってましたよ?」


「違いますよキャロル。

 悪魔の囁きに耳を貸してはいけません。」


「でもキャロルもかーたまは色々人として大丈夫かなと思ってますよ。

 こんな大人になったらヤバいなって思ってます。」


「…あんた本当に3歳?」


「えっもう痴呆ってやつですか?

 脳ミソを使わないと早くしんこーするとかしないとか。

 キャロルまだ介護はむりですよ。」


「キャロルあんた本当に色々凄いですよ。

 嫌味を交えた会話なんて誰に教わったんですか。」


「かーたまとマーシャです。」


「…何かごめん。」


「子供は親を選べませんからね。

 仕方ないです。」


 よしよしと幼いキャロルが女性の頭を撫でている。


 キャロルの口はポカンとマヌケに開いていた。


 憎まれている想像はしていたがこのパターンは予想になかった。


 なんちゅー会話だ。


 ルシウスはお腹を抑え蹲り背中を震わせている。


「いやーさすがキャロル。

 ほんと斜め上。

 幼少期からやってくれるなんて最早才能だよ。」


「…レオンに変人変人言われてましたけど私変人かもしれませんね。」


 若干凹む上に足の力が抜けしゃがみこんでしまう。


 なんというか力が抜けてしまった。


 アルブスは微笑ましげに窓の外を見ている。


「儂もいつもここでお二人の会話を聞かせて貰っておりますぞ。

 もうおかしくておかしくて。」


 キャロルは苦笑いしながら頷くしかない。

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