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真っ白な光の中内臓を引っ張られる気がした。
気持ち悪い。
胃の中身が出てきそうになる。
まるで何かに振り回され遠心力で引っ張られているような感覚に陥った。
思わず口を抑えてしまう。
耳の奥で時計の針が動く音が聞こえ内臓の不快感がそれと共に消えた。
目を開くと先程の地下のままだ。
ただ魔法陣はないし巫女もいない。
それに何やら上も騒がしい。
「…そうか。
キャロルが魔力暴走を起こしたのは礼拝日なんだ。」
横を見るとルシウスが立ち上がって裾についた埃を払っている。
キャロルも慌てて立ち上がった。
「誰か来ると不味いしまずは外に出ようか。
ほらこっち。」
ルシウスがキャロルの手を掴み歩き出す。
階段を上がり教会の裏口から外に出た。
先程は夜だったのに今は真昼間だ。
太陽がやけに眩しい。
ルシウスは暑いのか着ていた上着を脱いでいる。
「そう言えば初夏だったんだもんね。
服も考えるべきだった。」
「普通に夜は寒いから着込んじゃいましたよ私。」
「仕方ない。
適当に服屋に行って何か買おう。
この格好じゃ目立つからね。」
キャロルもルシウスも夏に相応しい格好とは言い難い。
明らかに季節を間違えた格好だ。
近くの服屋に駆け込み適当に服を選ぶ。
「兄ちゃん達そんな格好をして旅人かい?」
「そうなんですよ。
移動中馬車が襲われてしまいまして。
残っていた着替えが厚着しかなくて困ったもんです。」
「そりゃ災難だったなあ。
まっおまけしといてやるよ。
また襲われたりしたらうちに来てくれよな。」
「襲われない様気を付けますよ。」
店主は最初夏に厚着で来た2人を不審がっていたがルシウスの返答に気の毒に思ってくれたのか値引きしてくれる。
怪しまれなくて良かったと胸をなで下ろした。
「キャロル、暑いと思うけどフードは被っておいてね。」
涼し気な薄手のシャツに着替えたルシウスが自身もフードを被りながらキャロルに声をかける。
「あっ顔を魔術師に見られたら不味いですもんね。」
「それもあるけど戻った時に日焼けしてたらおかしいだろう?
何でバレるか分からないからね。
気をつけなきゃ。」
「あっ確かにそうですね。」
キャロルは慌てて旅装束のマントに着いているフードを目深に被る。
冬が近くなった季節に令嬢が日に焼けていたら100%怪しまれてしまう。
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