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「…お前変な奴だな。」


「よく言われます。」


 キャロルはペンを動かしながら答える。


 ハリーはキャロルの態度に少しだけ眉間に皺を寄せた。


「お前兄上の婚約者なんだろ?

 なのに味方じゃないとか意味が分からん。」


「正しくは婚約者候補です。

 知人だろうが友人だろうが家族だろうが全てにおいて全面的に味方になる必要なんてないでしょう?」


「…そりゃ確かにそうだが。」


「だから私はハリー殿下の卑屈な所や自分の目で見ようとしない所、思い込みの激しい所は嫌いですが。」


 キャロルの言葉にハリーは眉を下げて俯く。


 傷付いたらしい。


 キャロルは俯くハリーに視線を向ける。


「…言われた事を受け入れようとする素直さは嫌いじゃないですよ。

 あと尊大に見せようとしてるけどビビりな所も。」


「…お前よく兄上にキレられないな。

 兄上の心の広さに感謝した方が良いぞ。

 俺なら半日で処刑してる。」


「さあ?

 たまにキレてますよ。

 正直ビビる時もありますし。」


「…兄上は一切表情を変えない人だと思ってた。

 いつも何でも出来てずっと貼り付けた様な笑顔でさ。

 俺なんかあの顔が怖くて。」


「私もそこは同感です。

 でもあいつはかなり表情変わりやすいですから観察してみると面白いんじゃないんですかね?」


「…お前は俺と兄上に仲良くして欲しいのか?」


 キャロルはポカンと間抜けな顔で口を開けてしまう。


「…いえ別に。

 ハリー殿下が自分で接してみて仲良くしたいならすれば良いですし、合わないと思えば仲良くしなくて良いんじゃないですか?

 ぶっちゃけ私が巻き込まれなきゃ王族の兄弟喧嘩なんてどうでも良いです。」


「…本当に失礼な奴だな。

 そこは普通仲良くして欲しいとか言うだろ。

 あんなに啖呵切ったんだから。」


「あれはハリー殿下が間違った噂や悪評だけで罵倒してたからです。

 だから接した結果やっぱりあいつヤバいと思ったなら別に私は罵倒したりしませんよ。

 私だって殿下の事魔王とか面倒くさい奴とか笑顔怖い奴とか思ってますし。」


「…お前酷いやつだな。

 なんか兄上が哀れになってきた。」


 ブスッたれるハリーに新しい紅茶を継いでやる。


「でもいくら悪い部分があっても彼が努力した部分や成した功績は正当に評価されるべきだと思ってます。

 その点ではルシウス殿下の味方でありハリー殿下の敵かもしれませんね。」


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