217

「…何かルシウス君ってキャロルさんとレオン君のお兄さんみたいですよね。」


「あら私は保護者に見えましたわ。

 お父様みたいだと。」


 そんな2人の口撃にルシウスがまた凹みリアムは必死で慰めていた。




「そういやさキャロル。

 いい加減教えろよ。」


「ん?

 何をですか?」


 5限目の講義は近代史だ。


 覚えている事ばかりでつまらないと窓の外の雲を眺めていたキャロルにレオンが小声で話かけてくる。


「何か最近ずっと殿下とコソコソ何かやってるだろ。

 仲間外れなんて水臭いぞキャロル。」


「あー…そうですねえ。」


 コソコソやっているのは言わずもがな禁術についてなのだがずっと一緒にいるレオンならそりゃ気が付いて当たり前である。


「…コソコソやってるのは事実なんですがまだレオンに話せる物をこちらは用意出来てないんですよね。」


「はあ?」


「要は手伝って貰うとか協力して貰うとしてプレゼンするなら根拠や資料がいるでしょう?

 それが全くないんですよね。」


「…意味が分からん。」


「まあ整ったら殿下から1番に話が行くと思いますよ。

 幼なじみですし。

 殿下からすれば悩まず味方だって言えるのはリアムとレオン位でしょうから。」


「まあそりゃな。」


 1番に話が行くと聞き気分が良くなったのかレオンの機嫌が少しだけ治る。


 仲間外れにされて実はいじけていたらしい。


「でも別に幼なじみなんだし根拠とかなくたってルシウスが説明してくれたら協力するのにな。」


「…だからですよ。」


 絶対的な味方だと分かっているからルシウスはきっとレオン達を巻き込めないのだ。


 大事だからこそ根拠がないからと言い訳をしてレオン達を遠ざけている。


 相手が王妃だから。


 もし負ければ反逆罪として首が飛ぶかもしれないから。


 負けた時命が助かるのはルシウス位だろう。


 それが分かっているから巻き込む訳にはいかないのだ。


「…ほんと仲良いですよね。」


「ん?

 キャロルだって仲良いだろ?」


「私は…いえ、何でもないです。」


 キャロルがもしルシウスだったとして必要だと思えばレオンに助けを求めてしまうだろう。


 自分を犠牲にしてでも他人を守るなどキャロルには出来ない。


 レオンもきっとルシウスの為ならば命だって差し出すに違いない。


 そんな友人などキャロルには一生出来る気がしないが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る