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「まっ残念なご令嬢っすから仕方ないっすよ。」


 聞き慣れない声に気が付き窓辺を見ると赤毛の少年が座っていた。


「あっ今回は赤なんだ。

 久しぶり。」


「お久しぶりっす。

 そちらのお客様は初めましてっすよね。

 赤って名前で密偵やってますんで今後とも宜しければご贔屓に。」


「ああ。

 ルシウスだ。

 宜しく。」


 いつの間に来たのだろうか。


 全く気配を感じなかった。


 王宮内にも大量に入り込んでいると噂されていたがあながち嘘でもないのだろう。


 ルシウスの背中に寒気が走った。


「それで?

 今回はどんなご用事なんすか?

 ご依頼人はお嬢さん?

 それとも王太子殿下様で?」


「私が依頼人だね。

 えっとシャルドネ王国に行って王妃が禁術を使用したり禁術を使う様誰かに依頼した形跡がないか探って欲しいんだ。

 証拠の文書があれば全て手に入れたい。」


 ルシウスの言葉に少年はほうほうと頷きながら羊皮紙に羽根ペンを走らせている。


「なるほどなるほど。

 ではシャルドネ王国の王宮に王妃様の住まわれていた離宮、後は魔術師団の内部と王妃様が昔使われていた北部の別荘をお調べするって感じで良いっすかね?」


「あっああ。

 それで構わない。」


 王妃の別荘とか何故知っているんだとは口が裂けても言えない。


 というか奴らはかなりデカい組織になっているとキャロルは言っていた。


 ルシウスの情報はどれ位掴まれているのだろう。


 そしてどれ位流されているのだろうか。


 恐ろしい想像が止まらない。


「えーっとそうっすねえ。

 今シャルドネ王国の王宮に3人程いるんで別荘にかかる時間含めて2週間程貰いたいんすけど大丈夫っすか?」


「2週間でいけるのかい?」


「不安でしたら1週間後に経過報告をお伝えするサービスも行ってるんすけど付けとくっすか?」


「いや、大丈夫。

 2週間後に頼むよ。」


「分かりましたー。

 それでは作業員3名の経費と出張料と交通費等含めまして金貨60枚お願いします。

 あと頼まれていないけれど関係してそうだったり必要そうだと作業員が判断した書籍や書類等を持ち帰り、不要か必要かをご依頼人様に判断して頂きお渡しする追加サービスもオススメしてるんすけどいかがっすか?

 別途金貨2枚必要にはなるんすけどね。」


「それも付けておいてくれるかな?」


「かしこまりましたあ。

 あっ因みに全て捜索した結果何も出なかったとしても返金は出来ないんでご了承下さいっす。

 では金貨62枚お支払い下さいませー。」

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