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「ちょっ殿下!!

キャロル!!」


レオンが2人の間に飛び込む。


「二人共ここ教室だぞ?!!

まじで何やってんの?!」


はっとして見渡すと教室中の視線がキャロルとルシウスに集中していた。


皆壁に張り付くようにキャロル達から何とか距離を取りつつこちらを凝視している。


やらかした。


初日から盛大にやらかした。


しかも王太子を思いっきり殺しにかかっている所を見られてしまった。


キャロルの反逆罪を犯した所を見た証人が20人近く居る。


「まずいですね。

…このクラス消さなきゃ。」


「何サイコパスな発言かましてんだよ?!

つか二人共まずは落ち着け!

教室で殺し合いとか訳が分かんねえから!」


「大丈夫。

落ち着いてるよレオン。

皆様もお騒がせしてすみませんでした。」


ルシウスが頭を下げ焦げた床やキャロルの血を浄化魔術で綺麗にしてから席につく。


それを見てクラスメイトも怖々ながら席に戻っていく。


キャロルも椅子に座ろうとして気が付いた。


キャロルの椅子は先程燃え盛り跡形もなく消えてしまった後である。


自分達でぶっ壊した椅子を要求する事も出来ずキャロルは机に肘を付きながら座っているフリをする事にした。


所謂空気椅子である。

筋力のないキャロルの太ももは開始直後からプルプルと震えが止まらない。


「…空気椅子とはね。

まっキャロルは筋力ないから筋トレには丁度いいんじゃないかな?」


「…また殺したくなるんで黙ってて貰って良いですかね殿下。」


入口から担任らしき教師が入って来る。


怖いくらい静まりかえった室内に先程の惨劇をしらない教師の方が困惑していた。


キャロルは自分の太ももの筋力の事で頭がいっぱいで気にする余裕もなかったが。


チラリとその様子を見たルシウスが自分の座っている椅子を2人の机の真ん中に移動させた。


「…ほら、半分座りなよ。」


「…。」


キャロルはしばらく黙っていたがルシウスの威圧感と太ももの筋力に負け半分開けられた椅子に腰掛けた。


ルシウスと肩が当たる。


苛立つ程近い。


「…ごめん。

キャロルは間違ってないよ。

私が図星を刺されてしまっただけだ。

キャロルの言う通り忠誠を誓って貰える器じゃないと私自身が一番良く分かってるからね。」


だからごめんとルシウスが呟く。


…だからこいつが嫌いなのだ。


素直に謝ったりするから。


器のデカさを見せ付けられるようで腹が立って仕方ないのだ。

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