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「まあキャロルはお人好しだからね。

 自分の呪いついでに聖女の事も解決してやろうとか考えてるのかもしれないけど思い上がりも甚だしいよね。

 自分の呪いさえ10年解けてない上にいつ魔力がなくなるか分からない状況なのに危機感はないのかい?」


 カチン。


 キャロルの脳内で何か音が鳴った。


 こいつは前々から思っていたがキャロルの事を馬鹿にしている節があるのだ。


 イライラが止まらない。


「…はあ。

 確かに私は10年呪いが解けてない弱者かもしれませんね。

 ただこの呪いが王族の継承権争いに巻き込まれたかもしれない上に聖女だって言わば殿下方のせいでここに来たかもしれないわけですよねえ?

 完璧とお噂の王太子は王族がしでかした事のケツさえ拭えないんですかねえ。

 歴代王族最強の魔力量を持っていても王妃1人仕留められないなんて腑抜けてると思いません?

 そんな腑抜けた王太子に一貴族として忠誠なんて誓えませんね私は。」


「へえ、言ってくれるねキャロル。

 自分が解けないからって手伝ってる私に責任転嫁するのは良くないんじゃない?

 …王妃の尻拭いはまだ出来てないけど今ここでキャロルを捩じ伏せる位は出来るつもりだよ。」


「やってみますか?

 私も1度殿下と手合わせして頂きたいと思ってたんですよね。


 ……今度は反逆とか戯けた事言わんで下さいよ。」


 一瞬の間の後キャロルは手の中に氷柱を出しルシウスの喉元に突き刺す。


 ルシウスが一瞬頭を仰け反らせ熱球を纏った右手で氷柱を砕いた。


 氷柱は蒸気を上げて弾け飛びキャロルはその蒸気を目くらまし代わりに氷塊を飛ばす。


 ギリギリで避けた氷塊が頬を掠め血が一筋流れるがルシウスも熱を纏わせた左拳をキャロルの鳩尾に捩じ込んでくる。


 キャロルは飛び上がり椅子をルシウスの拳目掛けて蹴り飛ばす。


 目の前で砕け燃えた椅子の破片がキャロルの髪を少し焦がした。


 一瞬体勢が崩れた事を見逃さずルシウスがキャロルの足を払い床に転がす。


 キャロルもしゃがんだルシウスの顔面に風の渦を投げ付けルシウスを吹き飛ばした。


 口の中を切ったのか血の味がする。


 キャロルは床に口に溜まった血を吐いた。


 ルシウスも頬の血を拭っている。


「…ぶっ殺す。」


「私もやられたらやり返す主義だって前に言ったよね。」


 互いの目が爛々と燃え盛っているのが分かる。


 キャロルが手に魔力を集めルシウスを溶岩で包まんとしゃがみ込んだ。


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