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キャロルは何とか逃れようと視線を泳がす。
「まっまあそこは追々なんとかするとしてですね。」
「見苦しい位に苦しい逃げ方だね。」
「でっ殿下だって仲良くするメリットはあると思いますよ?」
「…へえ?」
キャロルはあわあわとしながら脳ミソをフル回転させる。
「今ぶっちゃけ呪いについて我々って手詰まりじゃないですか?
彼女と仲良くなって話を聞けば何かヒントがあるかもしれませんよ。
しかももし聖女様がハリー第二王子から殿下に乗り換えたらそれこそ万々歳じゃないですか。
王座確定なんですから。」
我ながら口先から出た誤魔化しにしては中々いい線を行っているのではなかろうか。
自分でもルシウスと彩花嬢が仲良くなるべきだと思えてきた。
キャロルはうんうんと自画自賛しながら顔を上げる。
ルシウスはにっこりと輝かんばかりの笑みを浮かべていた。
…ヤバい。
この笑顔はヤバい。
キャロルの培ってきた対ルシウス用警報機が大音量で危機を伝えている。
「…色々言いたいけどまず弟から私へ聖女が乗り換えたとして。
マリアヌ国の王妃は何の非もない弟と婚約していながら兄と情を交わした尻軽女になるけど大丈夫だと思うかい?」
「…いやあの、はい。
すいませんでした。」
「そして前半について。
もし私達が話を聞く事で自分が聖女ではなく召喚されたと気付かれたらキャロルは責任取れるのかい?
呼び出したなら帰して欲しいと言われたら?
しかも今聖女は王妃と第二王子の庇護下にある状況だよ。
それを敵だと言われたら聖女は誰を信じたらいいんだい?
キャロルは帰る事を諦めて漸く前を向いている聖女様を完膚なきまでに絶望に突き落としたいの?」
「…。」
何も言い返せない。
聖女を巻き込むと言う事は身寄りのない彼女に唯一の味方を裏切れと言うのと同じ事だ。
キャロルは唇を噛み締める。
でもキャロルなら。
自分なら。
「…でも私なら、知りたいと思います。
聖女が知りたいと願うならば、私は彼女には知る権利があると思うんです。」
それが例え救いにはならなくてもキャロルなら知りたいと思うから。
「…知りたいかどうかは聖女にしか分からない。
そして本当に王妃が仕組んだとされる証拠が何一つない今、彼女に教えられる妄言はあれど真実はない。
私は彼女に関わるべきではないと思うよ。
聖女を助ける以前にキャロルは自分の事さえ救えてないんだから。」
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