203

 キャロルは慌てて彩花嬢の前に立ち塞がる。


「ストップ。

 やり直しです彩花様。

 今のはどう考えても急ですし怖いです。」


「はっ!

 あたし願望が…。」


「はい、ダダ漏れです。

 殿下も若干引いてます。

 やり直しましょう。」


 彩花嬢は頷きもう一度頭を下げ手を差し出す。


「おっお友達からお願いします!!」


「…ああ、うん。

 よろしくね?」


 ルシウスは笑顔を引き攣らせながら彩花嬢の手を握り握手を交わす。


 彩花嬢は顔を真っ赤にさせ握手した手をワナワナと震わせていた。


「どっどうしようキャロルさん。

 あく、握手しちゃった。」


「良かったじゃないですか。」


「これはもう結婚の約束をした事にならないかな?

 異世界だとそういうルールとか暗黙の了解ってないのかな?」


「多分ないですね。

 気が早いです彩花様。

 友達からです。

 まだ友達なりたてです。」


「そっそうだよね!

 段階は踏まなきゃだよね!」


 彩花嬢が色々ぶっ壊れている間に時間を知らせる鐘が鳴る。


「じゃあまた後でねキャロルさん!」


「はいはい。

 急いで下さいね。」


 彩花嬢が急いで自分の教室に帰って行く。


 前の席から感じる視線が痛い。


「…ねえレオン。

 今だけ席を代わってくれるかい?

 キャロルと話さなきゃいけないみたいだ。」


「おっおお。」


 キャロルの縋る様な目を無視してレオンは慌てて立ち上がる。


 見捨てやがった。


 友達だなんだと言いながらあっさり見捨てやがった。


 ルシウスがキャロルの隣に腰掛け机に頬杖を付きながらキャロルの方を向く。


 笑顔だがそれが余計に怖い。


「…ねえキャロル。

 私言わなかったかな?

 弟が煩いから聖女には会わない様にしてるって。」


「…向こうから来たんですから仕方ないかと。」


「うん、そうだね。

 挙句の果てに結婚とまで言ってたけど仕方ないのかな?

 しかもキャロルは一応今婚約者候補でお手付きの身分なのにそれを注意しないのも仕方ない?

 弟の婚約者なんだからって懐かれてるキャロルなら言えたはずだよね?」


「…。」


 怖い。


 こいつは理詰めで攻めるタイプだ。


「いいんだよ。

 別に私から聖女にキャロルと婚約予定だからってはっきり断っても。」


「いやあのそれは…。」


 確実に修羅場だ。


 確実に面倒臭い。


「なら自分で言うかい?」



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