192

 ルシウスは自分の左胸をトンと人差し指で叩く。


「魔力量だよ。

 これだけは足りなければ長子でいくら知能や性格に問題がなくても継承権を持つ事は出来ない。

 だから継承権を持つ子供は1歳の誕生日に魔力量を測られる。

 ここで満たせていなくても公に公表される事はないが王太子と発表される事はないし、16歳の誕生日に再計測して満たせていない場合は継承権の放棄を大々的に発表されるんだ。」


「…はあ、なるほど。」


「因みに私は一応魔力量がSSSだったから問題なく継承権第1位となれたけどね。

 最低Sはないと継承権は得られないんだ。」


 予想はしていたがやはりSSSだったか。


 何だかムカつくがこれは嫉妬というやつであろう。


「そしてこれが気になる事なんだけどね、弟の魔力量は私にも知らされていないんだ。

 普通は王族同士で隠したりはしないし私の魔力量だって弟は知っているはずだ。」


「…それって。」


「分からないけどね。

 私が歴代の王族の中でも魔力量が多いからSでも少ないと感じて隠しているだけかもしれないし。

 …ただキャロルが3歳の時、弟は1歳。

 魔力量の測定をした年だ。」


 キャロルの背筋を冷たい汗が一筋流れた。


「…まさか私の魔力をハリー第2王子に?」


「…分からない。

 全てが妄想の域を出ない話だ。

 そして私が引っ掛かっている事は後2つ。

 最後まで聞いてから判断してくれるかい?」


 キャロルは黙って頷く。


 喉が焼けたようにひりついている。


 口を開けば今まで抑えていた物が溢れ出てしまうような気がした。


「…もう1つ気になっているのは今回現れた聖女。

 彼女は聖女にしては魔力量がAというのは少ない気がするとキャロルも私に言っていたよね?」


 確かに聖女の授業がどうだったかと聞かれポツリとそう答えた気がする。


 ルシウスは積まれた本から1冊取り出しキャロルの前に広げた。


 召喚術が纏められたその本の開かれたページには『異世界召喚』の文字が並んでいる。


 キャロルは慌てて文字を追う。


「『異世界から召喚した人間は平均以上の魔力量と光魔術を有する場合が多い。

 だが神に遣わされるという聖女との大きな違いは聖女に齎されるという王族以上とも言われる膨大な魔力量と、異世界から渡る際聖女は元の世界で亡くなっている記憶があるが召喚された者は生者のまま渡って来たという2点である。』

 …じゃあまさか彩花嬢は召喚されたと?

 一体何故?

 誰が何の為に?」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る