186
深夜2時。
文目も分からない暗闇の中キャロルは匍匐前進で進んでいた。
かつて他の令嬢達がルシウスの部屋に忍び込むのに使ったと言う天井裏である。
魔術を使うと防衛用の魔道具が反応し串刺しになると言う話をレオンに聞き夜でも目が効く毛玉がキャロルの前を進んでいる。
キャロルに尻尾をむんずと捕まれ毛玉は嫌がりながらもルシウスの魔力の匂いを辿り部屋を目指す。
レオンも一応誘ったのだが
「キャロルなら夜這いとかお渡り目当てって事で見つかっても説教で済むけど俺は言い訳出来ないんだからな?!
俺が刺客か殿下に変な気持ち抱いてるかの2択になるんだぞ!
絶対無理!
無理無理無理無理無理!」
と言って断られてしまった。
友達甲斐のない奴である。
代わりに忍び込むルートを無理矢理吐かせたがキャロルに罪はあるまい。
毛玉が立ち止まり鼻を引くつかせる。
キャロルがそこに指先を這わすと微かに天井板がズレていた。
ずりずりと板をズラし中を覗く。
部屋は薄暗いがキングサイズの白いベッドの真ん中が膨らんでいるのが何となく分かる。
動かないのを見る限り深く眠っているようだ。
キャロルは毛玉を頭に乗せ縁に手をかける。
シミュレーションはしておいた。
ぶら下がり静かに飛び降りるのだ。
しゅたっとカッコ良く決めるのだ。
…だがキャロルはシミュレーションの際すっかり失念していた点が1つだけある。
キャロルが引きこもりで腕の筋肉などほぼ無い点を。
「ーうぐっ!!!」
キャロルはぶら下がった瞬間重力に逆らうこと無くお尻から綺麗に落ちていった。
痛い。
尾てい骨が骨折したんじゃないかと言う位痛い。
お尻をさすさすと摩る。
尾てい骨骨折ってギブスとかどう巻くのかと余計な事に脳みそがフル回転している。
「…何やってんの?」
「…へ?」
顔を上げると呆れとも憐れみとも言えない目をしたルシウスとばっちり目が合う。
寝ていたはずなのに。
作戦は完璧だったはずなのに。
侵入して5秒で見つかってしまった。
キャロル一生の不覚である。
「まさかキャロルが夜這いにくるとはね。
痴女の気があるとは流石に気付かなかったよ。」
「なっ?!
痴女って」
憤慨して文句を言おうとしたキャロルの口をルシウスの掌が塞ぐ。
外そうと藻掻くが扉を叩く音が聞こえキャロルは固まった。
「…殿下?
何かございましたか?」
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