167

 全くもって納得していなかったらしい。


 キャロルは朝から神官に呼び出されまたとぼとぼと歩かされていた。


 デジャヴである。


「あっキャロルさん!」


 聖女様は今日も元気そうだ。


 服は一応ドレスにしたらしい。


 全裸と大差ないというのはさすがに堪えたようだ。


「…おはようございます。」


「おはようございます!

 あたしの事嫌いだからって手を抜いたりしないで下さいね!」


 いきなり牽制パンチを食らわされた。


 彩花嬢の睨み具合からこの間のキャロルの態度で完全に敵認定されたらしい。


 じゃあ何故教師役に指名したりした。


 全力で断って頂きたい。


 ただちょっとだけ敬語が使える様になった事は褒めてやろう。


 王妃様も頑張っているようだ。


「この前ので王太子様に会えるかと思ったのにやっぱり会えないし!

 キャロルさんと悪役令嬢のイベントをこなそうにもキャロルさんって重度の引きこもりだから会えないって言われちゃうし!

 こっちから呼び出さなきゃこない悪役って何なんですか?

 もっと悪役ならヤル気出して下さい!」


「…はあ、すいません。」


 やっぱり彼女はキャロルを悪役と勘違いしているらしい。


 確かに性格的に聖人か悪人かと問われれば悪人ではあるが。


 キャロルと戦う為にわざわざ呼び出すとは気合いが入っている。


 非常に迷惑な話ではあるが。


「…で、魔術に対してどれ位ご存知なんです?

 そもそも異世界ではどの様に教えてたんですか?」


「日本には魔術なんてファンタジーでしかないですよ。

 えーっと作り話の中の話って言ったらいいのかなあ?」


「ふむ。

 ではまず教会で魔力量について調べましたよね?

 それを見せて頂いていいですか?」


 横にいた神官が羊皮紙を手渡してくる。


『総合魔力量A

 適性火D 水B 風C 土B 光S 闇E』


 キャロルは顎に手を当てる。


 聖女だから光がSなのは分かるし素晴らしいと言えるだろう。


 だが総合魔力量がAというのは決して悪くはない、むしろ良いのだが王家並と言われると首を傾げる事になってしまう。


 キャロルは一応SSであるし、ルシウスなどは分からないが恐らくSSSに入るだろう。


 王家並みとはS以上だと聞いていた為何となく腑に落ちない。


「ハリー君と同じ位凄いらしいんですよあたし!」


 彩花嬢が胸を張っている為口には出せないが。


 というかハリー第二王子もAなのだろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る