85

「いやでもブチ切れてたし、俺とキャロルをくっつけようとかあの殿下がするとはなあ…。」


「そりゃあ幼なじみのレオン様にキャロル様と結婚したいと打ち明けて頂けなかったのですよ?!

 それは怒るに決まっておりますわ!」


「いや…でもなあ…。」


 レオンは色恋沙汰には非常に疎いが幼い頃から一緒にいたルシウスの性格は熟知しているつもりだ。


 ルシウスは昔から気に入った魔獣や珍獣には有り得ない程の執着を見せるのだ。


 他の人間に懐いたりしないよう自分に心底懐くまでは幼なじみのレオンにさえ見せようとしなかった。


 また懐いたはずのペットがレオンやリアムにも懐くような仕草を見せると静かに切れて部屋に閉じ込め躾し直していたのだ。


 正直そのペットへの執着に似た物をレオンはルシウスのキャロルへの態度で感じている。


 今回は魔獣や珍獣ではなく対象が初の人間だから良く分からないが、あれだけの狂気とも言える執着心を持つ男が仲が良いからという理由でレオンに渡そうとするだろうか?


 むしろそうなったら今までのルシウスならブチ切れて閉じ込める方が有り得る話だ。


 でもフワリー嬢の話が正解ならば相手が人間だから人権的な事もあってレオンに渡そうと判断したのか?


 レオンがうんうん唸っているのを横目にキャロルはレオンの作成した調査用紙を2人に渡した。


 2人は素晴らしいですわ!さすが幼なじみですわ!と大興奮している。


 情報量を自慢すると豪語していた本人は全く気付かず悩んでいたが。


 結局お茶会が終わるまでレオンの悩みが解決する事はなかった。


「レオン、この後用事ありますか?」


「…へ?

 あっいやないな。

 もう急ぎの書類は終わらせたし。」


「じゃあ王都まで付き合って貰えます?

 昨日見た飴細工を買いに行きたいんですよね。」


 キャロルの言葉に悩んでいたからか昔のルシウスが蘇る。


 ーレオンに懐く仕草を見せたら閉じ込められ躾しなおされていたペット達。


 レオンは首を振って嫌な考えを捨てた。


 今回は人間相手だ。


 ルシウスも無茶な事はしないだろう。


「そう言えばだけどさ、お渡りを受けたら離宮から出られなくなるだろ?

 その事については殿下何か言ってなかったのか?」


「えっと住む場所は一緒だからって事とあとは将来政略結婚するとかは諦めろとは言われましたね。」


 レオンの背中を汗が流れた。


 側近との結婚も言わば政略結婚なのだ。


 それを諦めろと言う事は答えは1つしかない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る