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茂みの中でしゃがみ込んでキャロルは鞄を漁る。
『りもこん』と虫型の魔道具を草の上においた。
200m向こうには1匹のヴォーグの姿が確認出来る。
距離が離れている為ヴォーグはまだキャロル達に気付いてはいない。
「これはなんなんだい?」
ルシウスが興味深そうに虫型の魔道具を指でつつく。
「これはノアさんの蜂からヒントを得て開発した新作の『ブンブン丸4号』です。」
「私の蜂から?」
「はい。
遠隔操作で動かし対象物に針を指し仕込んである毒等を注入します。
今回はアラクネの血が安価で手に入りましたのでそれを仕込んでおきました。」
キャロルは喋りながらりもこんを操作する。
ブンブン丸4号は羽音に似た機械音を立てながら浮遊した。
「あーなるほどね。
神経毒が含まれてるんだっけ?」
「その通りです。」
ブンブン丸4号はヴォーグに近付いていく。
ヴォーグは虫だと判断したのか煩わし気に尻尾を振った。
ブンブン丸4号はヴォーグの首元に針を突き立てる。
ヴォーグは少し唸り後ろ足で首を掻く。
ブンブン丸4号は既に注入を終え空に退避させた。
「このまま5分待機ですね。」
キャロルは時計を取り出し時間を確認しながらヴォーグを見る。
ヴォーグはブンブン丸4号が離れたからか今は大人しく座って欠伸をしていた。
じわじわと毒が回っているなど思えない程ほのぼのした光景である。
毒が回るのを待つ間にブンブン丸4号を回収し鞄にしまう。
キャロルは頬を伝った汗を手で拭う。
木陰とはいえ暑いものは暑い。
ルシウスは何故か汗一つかかず涼しい顔をしているが。
温度を感じる部分がぶっ壊れているのだろう。
なんせ魔王だ。
暑さなど敵ではないのかもしれない。
怒ったらブリザードも出るしもしかしたら血が凍っている可能性もある。
いつか研究させて貰うのも悪くないだろう。
「…効いたみたいだね。」
ルシウスの声にキャロルもヴォーグに視線を戻す。
ヴォーグの様子は明らかにおかしくなっていた。
草むらをゴロゴロと転げまわったかと思うと不自然なまでに尻尾を振り回し、口はぽっかり開けて涎が垂れ落ちている。
キャロルは茂みから立ち上がりヴォーグに向けて詠唱を唱えた。
「ファイアーボール。」
キャロルの手から放たれた火の塊がヴォーグにぶつかりその体を燃やす。
後はもう燃え尽きるのを待つのみだ。
ヴォーグのくぐもった鳴き声が森に木霊した。
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