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「そう言えば私派閥に属すというのは初めてで分からないのですが、例えばもし殿下がフワリー様を選ばれた場合どうなるんですか?

 殺し合いですか?」


 キャロルの疑問を聞きアグネス嬢の顔が引き攣る。


「ころ…。

 いえその様な事はございませんよ。

 私の名前が着いた派閥になってはおりますが云わば盾の様な物です。」


「盾ですか?」


「ええ。

 離宮とは即ち女の園でございましょう?

 1人では嫌がらせ等を受けた際や厳しい王妃教育に心が折れてしまうものですわ。

 ですので1番爵位が高い私の名前を派閥として掲げる事で『派閥に属している者に手を出したらカルヴィン公爵家の敵とみなす』と嫌がらせに対して牽制出来るようになるのです。」


「あーなるほどー。」


「それに私は勿論殿下をお慕いしておりますがそれ以上にこの国が好きなのです。

 殿下がお選び頂いた方と添い遂げられるのがこの国にとって1番為になると思っておりますわ。

 ですのでフワリー様やキャロル様が選ばれた際には必ず微力ながら家臣として支えさせて頂きたく思っております。

 ファンティーヌ様が選ばれた場合は家の立場としては複雑ですがそれでも祝福させて頂きますわ。

 ですから私に遠慮なさるのはやめて下さいませ。

 きちんと判断する機会を殿下から奪うのは私の本意ではございませんので。」


「ですから私も全力で殿下にアピールしてますわ!

 キャロル様も引きこもらずに頑張って下さいませ!」


 アグネス嬢はなかなかフェアプレーの精神に溢れた令嬢のようだ。


 フワリー嬢も喝を入れてくる。


「ですので派閥とは言いましてもこうして時々お茶会をして情報交換をする位ですわ。

 婚約者の決定まで2年もありますでしょう?

 その間の防衛手段だと思って下さいませ。」


「なるほど。

 了解しました。」


 色々考えられているようだ。


 派閥というのは云わばお友達グループに近い物らしい。


「キャロル様も次からは殿下のリサーチもお願い致しますわよ!」


「リサーチ?」


 フワリー嬢が羊皮紙を取り出す。


 読んでみるとルシウスの好物などが書かれている。


「殿下の好まれる物をリサーチして情報交換しますの。

 キャロル様も引きこもらずに頑張って下さいませ。」


「はあ…適当に頑張ります。」


 キャロルは調査用紙を受け取りその日のお茶会は解散したのであった。

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