21

「それではこちらの石版に血を1滴垂らして頂けますか?」


 そう言われナイフを渡されたレオンは躊躇う事なく指先に刃を立てる。


 スゥッと切れた傷口から血が滲み石版に一雫落ちた。


 それと同時に石版が淡い青色に光だしレオンは興奮を抑えきれないようで目を輝かせている。


 唸れ俺のチートのはずの血液!とか呟いているが大丈夫だろうか。


 石版をお姉さんが覗き込み頬を引き攣らせた。


 まさか本当にチートって奴なのか…?


「宰相の息子…!?」


 ボソッと呟かれた言葉に納得する。


 能力ではなくそちらだったらしい。


 お姉さんは今度はレオンの横に立つルシウスを青ざめた顔でチラチラと見て「いや…でもまさか…」とブツブツ呟いている。


 その予感がすぐ現実になる事をまだお姉さんは知らない。


「えー…レオン様、いえレオンさんは弓使いと書かれていますがストラテジストやシャーパーの才能もあるみたいですね。」


「ストラ…?」


「ストラテジスト。

 軍師や戦略家だ。」


「えっ何それかっこいい!」


 レオンは手を叩いて喜んでいる。


「じゃあシャーパーって何なんだ?!」


「シャーパーは詐欺師やペテン師だな。」


「…何それ。」


 まぁまぁとルシウスに肩を叩かれその2つも一応ジョブに入れてもらう。


 シャーパーはレオンが嫌がったが才能があるなら伸ばすべきだというルシウスに押し切られてしまった。


「レオンさんはパーティーでは後衛がよろしいでしょう。

 後衛で登録させて頂いても大丈夫ですか?」


「…はい。」


 詐欺師の才能があると言われたショックからかレオンの元気がない。


 チートでなくて残念である。



「じゃあ次は私お願いします。」


 キャロルも前に出て差し出された石版に血を落とす。


 石版を見たお姉さんの顔が青くなっているが大丈夫だろうか。


「…えーキャロさんは魔術師との事ですがマギテックとラヴィンジャーの適正もあるようです。」


「あー確かに魔術師よりは魔導機術士のマギテックの方がしっくり来るな。」


「なるほど。

 後そのラヴィンジャーってなんなんですか?」


 そうキャロルが聞くと言いづらそうにリアムが目を逸らしながら答えた。


「…邪神に仕えて虐殺と破壊を捧げる狂戦士。

 破壊神や略奪者とも言われる。」


「…なるほど。」

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